小 熊 座 2008/6  当月佳作抄
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     2008/6  当月佳作抄  ムツオ推薦


   花を見る花の奥なる闇を見る           越高飛騨男

   菜の花にまみれて黄泉もたたかひも      平松彌榮子

   花冷えの雨粒光り禁猟区             佐藤きみこ

   闇市の土の匂ひや春夕焼             上野まさい

   罌粟の昼時計は時を追ひつづけ         田中 哲也

   火を蔵す尖り芽はみな東北圏          浜谷牧東子

   いつか飛ぶきっと飛ぶなり冬菫         土屋 遊蛍

   ふり向けば水仙すでに発ちしあと        山本  源

   前立腺切除男に花吹雪              菊地乙猪子

   花小金井降り来て花は天に浮き         大場鬼奴多

   ひとひらごとに北の意志あり山桜        浪山 克彦

   膕をしづかに上る春の月             土見敬志郎

   昔むかしあるところにも花吹雪          篠原  飄

   春愁プランクトンも人間も             佐藤 成之

   彼岸西風切株と冷え同じくす          小笠原弘子

   ほろ酔ひのやうな山影山葵咲く         山田 桃晃

   花こぶしに日の集りて孤独なし          澤口 和子

   初蝶来翅上げるから舞えという         吉本みよ子

   吾世捨人雲と話しすみれ愛で          岩井 タカ

   種まきの親子薔薇いろ日暮いろ         松本 光子

   人の鬱集めて春の空がある           福原 栄子

   頬杖の頬の重たさ夕雲雀            永野 シン

   生まれた頃の顔してみんな花見かな     関根 かな

   花散らす自ら幹を冷たくし            小野  豊

   満開の桜の下の通過駅             柳  正子

   カナリヤの気分はこべらはびこらせ      末吉 文枝

   春の雨まづくちびるを濡らしをり        春日 石疼

   神将の全身であり春光             伊澤二三子







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