小 熊 座 2009年2月 特別作品
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     2009年2月 特別作品



   我に日を  平松彌榮子



 地表には日のかなしみと秋の蝶

 一点の秋蝶焦がすこの世の日

 出口入口なかりし妣の菩薇館

 こしかたの長さのほかの蜷の道

 未練なき日の落ちてゆく裏

 

  煮 凝    千 田 稲 人


 敵身方不明のカンナ迎えけり

 響きくる音叉の中に冬の菩薇

 天命は知るべくもなし冬の虹

 腰痛の妻むささびは木から木へ

 浮寝鳥気化するは脳のみならず

 


  秋  風    菅  邦 子


 秋風に背びれのやうなごときもの

 吾は閉所恐怖症なり虫の秋

 小春とは祖母のものなり眠るべし

 天を指す枯木の力父は亡し

 日の翳る時は燦めき冬木の芽

 

  四 方    須崎 敏之


 雨に萩スパークするや旅心

 草深くなる星霜の机辺かな

 ァパートの鉄階に孫雁渡し

 薄紅葉しており東京放浪記

 思い至れり毛織物婚鳥渡る

 

  去年今年    阿 部 流 水

 泥沼の報復合戦百舌鳴けり

 争いの後の鎮静冬の雨

 変革の言葉が躍る懐手

 失職の若者のデモ冬の虹

 師走には師走の足音響きけり

 

  北  天    大 澤 保 子


 敷石の上を歩けと黄落期

 大寒の光源として観覧車

 瞑想のひとりがをりぬ枯野駅

 枯蔓の混沌を抜け水の音

 透明なビルの吃立霜柱

 



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