小 熊 座 2009/4 №287 特別作品
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 2009/4 №287  特別作品
  
          
   

   寒       木村 えつ

  新雪をむらさきと見て病みぬける

  まつすぐに生きし月と日葱真白

  ガラスのやうな少年の居る寒卵

  三界の席一つある日向ぼこ

  まごころと言ふ搦手や梅咲けり

  氷橋星座と渡る目まい橋

  氷らむと大地の底で考へる

  


    春  へ    上野 まさい


  きさらぎはしづかに翅を使ひをり

  鳥になる予感二月の空気かな

  水温む木の真ん中は創世記

  冴返るものに新聞紙の匂ひ

  いぬふぐりこの一輪の宇宙かな

  いぬふぐり海へひろがり家族葬

  たはむれに押せば傾く春の山



    おもちゃ箱   蘇武 啓子



  啓蟄や何やら動くおもちゃ箱

  父の夢二夜続きや黄砂降る

  回転扉押して黄砂の街を行く

  葱坊主ひとつは横を向いている

  母と我我と子その子犬ふぐり

  兵どもの夢の数ほど犬ふぐり

  廃品回収車寒明の路地を出る




    東 風     浅利 康衛


  どぶろくと海鼠胃の腑にとろけをる

  冬渚ぼくのレプリカ漂着す

  筆始め去年の穂腹を押さへたる

  泣人形泣かせて淑気醒めにけり

  人日や転生の鱏ひるがへり

  歳時記に隠れてゐたる小年越

  寒槽の水蹴りあひて帆立どち
    





  
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