小 熊 座 2010/7  №302 当月佳作抄
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     2010/7  №302  当月佳作抄

                                      ムツオ推薦


   

  身のうちに辺境はあり夏近し           増田 陽一

  身の中の青葉若葉を誰も知らず        青野三重子

  桜しべ降る眦の昭和かな             土見敬志郎

  標本の翅初夏の空映し              松岡 百恵

  羽抜鶏あたまの上はいつも空          上野まさい

  自由とはさざ波のようソーダ水          中鉢 陽子

  火鼠の皮ありといふお風入れ           阿部 菁女

  かなしめば蕗の広葉の裏がえる         小笠原弘子

  ひざついて種まく沖縄はデモ           佐々木とみ子

  混沌と春の色して親子丼              浪山 克彦

  青鷺のあめ獰猛な眼をかくし           我妻 民雄

  遠青嶺子が重なりて来るやうに          菅  邦子

  橡の花ゆらり遥かなポーランド           遅沢いづみ

  雹降ってくる天上の寂しさに            宇津志勇三

  何ゆえにいでし月夜の茗荷の子         安藤つねお

  本籍は夜の東京きんぽうげ            山野井朝香

  花吹雪く逆白波の如くにも             田中  滿

  葉桜や死に場所という場所はなし         俘  夷蘭

  行く春の魚影のごとき少年等           清水 智子

  雪国の心の象座禅草                菊地 恵輔

  陰口に春光とぐろ巻いており            佐竹 伸一

  露の世を煮詰めてをりぬ苺ジャム         畠  淑子

  母になる夢をみました竹の秋           澤邉 美穂

  憎むほど親しくはなしねぢり花           大和田節子

  春潮の深く渦巻く日なりけり             日下 節子

  名を呼べば波が眩しく応え夏            福原 栄子

  吾が影を少しめくりて初夏の風          森田 倫子

  風薫るビルに皇居に今ここに           佐藤 レイ



  

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