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 小熊座・月刊 
  


             小熊座25周年大会・祝賀会記
  

  さる11月27日(土)、塩竈市のホテルグランドパレス塩釜を会場に、小熊座25周年記念

 の大会並びに祝賀会が開催された。

  祝賀会に先立ち開催された大会では、主宰の挨拶に続いて、第七回小熊座賞の授与

 が行われた。受賞者は、応募総数70篇の中から、浪山克彦氏の「一円玉」に決まった。次

 作は我妻民雄氏「夏の雪」である。(応募の内容、審査員評については12月号に掲載)。

 当日の来賓で、選者の一人の大石悦子氏より選評をいただいた。浪山氏はアクシデント

 があり、やむなく欠席であったが、主宰から賞状と副賞である額装された鬼房先生直筆の

 俳句が会場で披露された。

  引き続き、20周年以降に刊行された句集(26冊)の祝賀の場となった。主宰から一冊一

 冊の紹介の後、出席された9名の著者の皆さんに、花束が贈呈された。

  この後、作家の小林恭二氏の記念講演が行われた。「俳句のやめ方」という挑発的な演

 題。自らの俳句との係わりを述べながら、現代俳句の状況について、示唆に富む内容。

 最後に俳句をしばらく中断していた小林氏から「俳句復活宣言」がなされた。

  25周年祝賀会は、20周年以降に刊行された句集の祝賀会を兼ねたもの。作家の小林

 恭二氏や文芸ジャーナリストの酒井佐忠氏を始め、来賓41名をはじめ、出席者は同人・

 誌友合わせて103名の盛大な祝賀の宴となった。

                                               (事務局記)


             いい日、いい人 

                                          佐々木とみ子


  仙石線の車窓に小春日の景色がひらける。今日は小熊座25周年記念大会の日だ。

 25年近くこの電車に乗ったのだと思った。

  今回は合わせて小熊座賞の授与、句集発刊祝賀もあり花満開の感じ。この5年間に計

 26冊の句集刊行はめざましく、特に93歳の松本笹枝さんや阿部宗一郎さんが2冊出し

 ているのには頭が下がる。第7回小熊座賞は浪山克彦さんへ。鬼房染筆の立派な額が

 頂けるのに当のご本人がいない。この晴舞台に浪山さんどうしたのと思ったら、どうも大

 会までの準備に体力を使いきってしまったのらしい。裏で支えている方々のご苦労にまた

 頭が下がる思いだ。

  小熊座賞選考にあたって、「図抜けた鮮度が感じられない、小熊座的発想という一つの

 類型があるならば大いに反省しなければならない」との主宰のことばは身にこたえた。

  しめくくりの講演は作家小林恭二氏の「俳句のやめ方」と意表をつくタイトルで、俳句入

 門とか上達とか常套的なものの氾濫するなかで異端の魅力があり謹聴した。括ればそれ

 は俳句の(○○の)やめ方であるよう。○○には各自やめたいことを嵌める。類型、模倣

 もたれ合いなど思いあたることがさまざまある。もう一つ心中ひそかに喝采したのが講師

 先生の遅刻だった。少し遅れそうですとの説明はあったが、スムーズに進行していたので

 ほとんど気がつかなかった。小林氏が壇上で話されて始めてわかったのだが、実はこん

 なふうだったそうだ。

               

  小林氏は大宮から新幹線に乗り検札の車掌さんに仙台から塩竈への乗り替えを聞いた

 ところ、それは長野新幹線だった。急いで次の停車駅で降りてまた大宮へ引き返し東北

 新幹線に乗るという、大変なご苦労をされて来て下さった訳である。これほどの距離をさ

 ほどの遅刻もなく運んでくれるJRは凄い。日本のJRほど時間に厳しい国はあまり無いそ

 うだ。定められた路線を寸分の誤差もないように走る。正確無比でありながらしかしなん

 か貧しく息苦しい。小林氏が迷った時間・空間はロスのように見えながら実はとても豊か

 だったのではないか。何かしら心中波立ったはずだ。規定の道から外れる、安全圏から

 身を放り出す。それが詩の原動力であるなら、小林氏は無意識のうちにその彷徨をして

 いたことになる。もしかしてその時点から今日の講演が始まっていたのではと思うと、嬉し

 くなってしまった。

  翌日は旧亀井邸で開かれた鬼房俳句展へ出かける。いつものように奥さんと美穂さんが

 もてなして下さった。色紙や短冊など全部で40点ほど。いつもどおりに懐かしい。「地吹

 雪やわが王国は胸の中に」。わが鬼房は胸中に秘めて、お前はお前の句を作れと叱られ

 たようだった。



             未来への一歩 

                                          土見敬志郎


  暁の明星、金星が孤高を貫く様に光彩を放つその日、平成22年11月27日は雲ひとつ

 ない大会日和であった。ホテルグランドパレス塩釜の平安の間において定刻午後1時、渡

 辺誠一郎氏の司会で始まった。全国各地から参集した小熊座大会を待ちこがれた顔、顔

 がそこにあった。

  冒頭の挨拶で高野主宰は先師鬼房の小熊座を継承してから二度目の祝賀大会である

 むねの感慨を吐露され、今後の小熊座の有り様として孤に徹し練磨することを強調しなが

 ら自己洞察の決意を以って結社の陥穽とも言うべき慨視感を排し創造の世界を目指せと

 新たなる決意を表明された。

  第7回小熊座賞は浪山克彦氏に決定した。佐藤成之氏から選考経過の説明があり、選

 者の大石悦子、小林恭二、高野ムツオの各先生から講評がなされた。受賞者の作品に

 於けるイメージの豊かさ、表現力のしたたかさを激賞され、併せて応募作品全体のレベル

 の高さをも評価された。受賞者の浪山克彦氏は体調不良のため欠席、高野主宰より賞状

 副賞として「胆沢満月雪の精二三片」の半切の額が紹介され満場の拍手喝采を浴びた。

  また、今回において特筆すべき事は過去5年間で26冊の個人句集上木を見たことであ

 る。小熊座創刊から集計しても96集刊行という他結社には見られない、正に豪華版であ

 る。高野主宰から句集と著者の紹介があり、それぞれの著者の個性、作品を挙げての懇

 切な句評のあと、佐藤きみこ氏の司会で句集上梓者への花束贈呈があり、正に絢爛さを

 呈した。越髙飛驒男氏が鬼房先師の残した言葉を引用され謝辞を締め括った。


  

  次いで演題「俳句のやめ方」についての小林恭二先生の講演があった。かって新興俳

 句事件のあおりで俳句の筆を折らざるを得なかった故三橋敏雄の俳句を止めることは悪

 女と別れることより難しいの言質に触れ、自身が俳句に手を染めた大学在学の時代の交

 流のあった人達との句会や句作を通しての様々なエピソードを交えながら淡々と、あると

 きは熱っぽく語り、自身が30年間俳句を中断していた過去に触れ、俳句をやめる事は難

 しい。俳句の中毒性は五七五と言う計量カップでほんの一部をみただけで広がる世界観

 は競馬で万馬券を引き当てた爽快感を強調、俳句魔法の呪縛から逃れられない一面を

 語ってくれた。

  佐藤成之、関根かな両氏の司会による祝賀会は一転して祝賀ムードに終始した。河北

 新報社、俳句研究社を始め、各界の来賓十余名の方々からのお祝いのスピーチはいず

 れも小熊座の未来への慈愛溢れる祝福の言葉であった。最後に千田稲人同人会長の閉

 会の辞を以って熱狂に包まれた小熊座25周年大会・祝賀大会はとどこおりなく午後4時

 散会となった。25周年はもう過去である。未来の可能性を模索しながら小熊座は創造の

 世界に向けて新たなる第一歩を踏み出した。



             鬼房の磁力・小熊座の磁力 

                                          山野井朝香


  去る、11月27日(土)  小熊座25周年記念大会が、ホテル・グランドパレス塩竈で、午

 後1時より開催された。開会の辞、小熊座主宰挨拶、小熊座賞授与と進む。小熊座賞一

 席の、浪山克彦氏は、急に体調を崩されて、残念な欠席となった。

  選後評として、選者の大石悦子氏、渡辺誠一郎編集長、高野主宰よりそれぞれの作品

 についての懇切丁寧な感想が述べられた。

    

  句集発刊祝賀では、ここ5年間に発刊された句集26冊を祝し、主宰が各句集の紹介を

 して、花束の贈呈が行われた。

  講演会は、作家小林恭二氏による、演題「俳句のやめ方」であった。華やかな俳句作家

 との交遊歴、京大俳句事件等を、淡々と語られて、俳句界の歴史の出来事についての深

 い内容に、興味深く耳を傾けた。なかでも現代詩を読む事と強調されたのが印象的であっ

 た。結論とし、俳句ワールドに一歩足を踏み入れたなら、抜け出せない、やめられない、

 末の末までつきあうのが、俳句であるという思いを深くした。

  記念祝賀会は、11の円卓で、総勢百名以上の参加であった。司会・進行は、佐藤成之

 ・関根かなの気鋭の両氏で、塩竈市長・佐藤昭氏の、俳句に造詣が深い挨拶に感心しき

 りであった。スピーチの指名を受ける人それぞれが、「噂に聞いていましたが、本当に、い

 きなり振るのですね! 小熊座の大ファンですが、これだけは許せません」とスピーチの

 冒頭で、シャッポを脱ぐ表情が、手作りの心地好いパーティーの雰囲気を醸していた。

     

  蓬田紀枝子氏のスピーチでは、鬼房氏が幼児期、キー坊と呼ばれていた事、蓬田氏自

 身が主宰の姉さん的位置であること、先師みどり女が冷や酒とつまみを前にして、にこっ

 としていた、鬼房師の笑顔を語った事等、知られていないエピソードを披露して下さった。

 大石悦子・正木ゆう子・神野沙希・石井隆司・鈴木忍・各氏の貴重なスピーチの後に、「N

 HK俳句」を担当したアナウンサー、石井かおる氏の、人の暮らしに添った生活の番組作

 りへの想い、又、主宰が一年を通して戦争という背景の中で、日本人がどう生きていたか

 を伝え続けていた事、主宰が、縦軸の空間を大切にしている姿勢に、末席で勉強をしたい

 ――というスピーチに琴線が揺れた。25周年記念大会に、栃木句会から総勢五名が参

 加した。翌日は、亀井邸での、鬼房展を見学し、小熊座という結社を拠として、俳句の勉

 強をできる唯今の環境に、鬼房先生の磁力を認識した。その後、塩竈神社を参詣しマジ

 ック・アワーの仙台の街に別れを告げた。


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