小 熊 座 2013/3   №334 当月佳作抄
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     2013/3  №334   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    初日の出津浪の村に永住し                古山のぼる

    擬態して居りしが枯葉ごと散りぬ              増田 陽一

    枕べに凍らんとする海の音                 佐々木とみ子

    深海ノモノミナ光ル鬼房忌                 大場鬼奴多

    歳晩を魑魅魍魎と京にあり                 上野まさい

    子鯨に声かけられし夢はじめ                浜谷牧東子

    大寒のかたちに山の暮れてゐる              土見敬志郎

    子を宿すごと初雪を掌に                  松岡 百恵

    象の皮膚人間の皮膚寒旱                 柳  正子

    水温むころの蛇籠は夢うつつ               沢木 美子

    えんぶりの銀の烏帽子が雪降らす            阿部 菁女

    老人的才能であり冬の蠅                  浪山 克彦

    鬼房の海へこませて初日出づ               山田 桃晃

    昼月のいつか夕月冬の浜                 鯉沼 桂子

    帰心とは陽の届きたる花八つ手             山野井朝香

    馴染みても瓦礫は瓦礫冬かもめ             水戸 勇喜

    牡蠣むくや手刀と手に明日がある            俘  夷蘭

    海思ふ瓦礫も懐手の吾も                 菅  邦子

    横丁の橇に翼のあったころ                蘇武 啓子

    枯れ切つていよいよ自在糸柳               田中 麻衣

    好物のひとつ冬日を吸ひにけり              郡山やゑ子

    セーターより首出して一億分の一             牛丸 幸彦

    さざ波のこほる刹那のかたちかな             瀬古 篤丸

    骨拾ふ誰もが棄民春の雪                 坂本  豊

    けふのやうな明日でありたき寒夕焼           日下 節子

    麦の芽や飽くこともなき鳶の笛               水戸 勇喜

    風までも雪の朝に影となり                 佐藤  茉

    手をのべてくれそうな樫初日影               永野 シン

    山の陽の一直線に初暦                   伊澤二三子

    反骨を真似たきものに寒桜                  田坂名雅子




  

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