小 熊 座 2014/3   №346 当月佳作抄
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     2014/3  №346   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    はみ出せるティッシュ雪嶺のかたち            増田 陽一

    雁来紅水底の闇ゆるぎなし                 平松彌榮子

    鮎魚女の喉のぞきこむ雪の暮               小笠原弘子

    裾野とぶ目差のまま凍てし蝶                中井 洋子

    氷海の大鮃もわれも傘寿すぎ                佐々木とみ子

    着ぶくれやメトロは神田川の下               我妻 民雄

    おほぞらの奥にまだ奥ありて雪               瀬古 篤丸

    枯蘆のなかに立ちたる初詣                 浪山 克彦

    鑢にて言葉は研げず寒北斗                 永野 シン

    生き残るには訳のありポインセチア             大久保和子

    海嶺を越えしうねりの寒の潮                 志摩 陽子

    一人餉の痛き白さの蕪漬                   岡田 明子

    墓はみな頭のみ出て出羽吹雪く               菅原 玲子

    此に眠らむ胆沢扇状初日さす                鎌倉 道彦

    陸前の泥かぶり石淑気満つ                  山田 桃晃

    石畳に月光浴びし寒波かな                  澤口 和子

    ペースメーカー・オストメイトも年を越す           渡邊 氣帝

    手袋の記憶にいつも昼の月                  山野井朝香

    原始より入日はやさし寒鴉                  吉野 秀彦

    冬眠の蛇に抱かれむわが骨も                中村  春

    田平子と張りついてゐむ廃炉まで              佐藤 弘子

    グァム聖夜あの戦場の海鳴りか               丹羽 裕子

    鷹として生きる羽毛の先までも                布田三保子

    寒林がかがやく父を恋ひをれば               日下 節子

    地にふれてそして静謐竜の玉                 菅野奈美江

    風花のやうに風化す産土は                  坂下 遊馬




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