小 熊 座 2015/8   №363 当月佳作抄
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     2015/8  №363   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    象歩むたび万緑の波打てり           土見敬志郎

    道祖神へお参りですか毛虫どの         阿部 菁女

    太陽も月も真ん丸夏燕              小笠原弘子

    自由とは腹括ること麦の秋            永野 シン

    蚊遣火の渦巻となり妻消える           篠原  飄

    みなみ風在りし日といふ忘れもの        鯉沼 桂子

    翼ならたたんでいるわ梅雨だもの        沢木 美子

    ゆがみつつ退く力蚊柱に             上野まさい

    みどりなる栄螺の腸や迷宮忌          増田 陽一

    未来図は永久に未完や青芒           日下 節子

    隠れ耶蘇いま藤となり生きてをり         関根 かな

    我が胸中見よとばかりに花菖蒲         瀬古 篤丸

    死んでからひらくまぶたや草螢          佐々木とみ子

    月涼し人であること忘れそう            柳  正子

    六本木ヒルズもただの丘夕立           さがあとり

    よく駆けたががんぼ明方は骸           我妻 民雄

    質草にならぬ女と初鰹               長尾  登

    沖を聞き浜昼顔は俯かず             須﨑 敏之

    胸奥の闇を照らして蛍とぶ             佐藤 みね

    紅涙も青いゼリーもガラス箱            蘇武 啓子

    やませ吹く鋼のごとく眠るとき           春日 石疼

    楢葉標葉山河を容るる代田なし          坂本  豊

    ぼろ菊の絮の奥なる母の家            佐藤 弘子

    潮鳴りは島のオラショや海桐咲く         丸山みづほ

    汚染土の積まれしそこは紫陽花領        草野志津

    久万緑を迎えるための肺ふたつ         千倉 由穂

    更衣空一枚を鏡とす                斎藤真里子

    動くもの大陸・耳石・蟻の列            渡邊 文子

    陰干しのどくだみの香や共に老い        高橋  柾

    何なくも朝餉の窓に若葉かな           岡田とみ子

    被曝せし牛の鼻繋走り梅雨            植木 國夫





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