小 熊 座 2016/5   №372 当月佳作抄
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     2016/5  №372   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    血縁は荒縄のごと梅の花            渡辺誠一郎

    天窓を波音過ぎる雛祭              土見敬志郎

    鶯のこゑも夢とぞ木枯忌             増田陽一

    星雲を仰ぎてよりの余寒かな          日下節子

    暮れてゆく海暮れ残る蘆の角          小笠原弘子

    水中とときどき気付く寒の鯉           中井洋子

    東京で暮らす鳥たち霾ぐもり           大場鬼怒多

    この空のどこも汚さず鳥帰る           栗林  浩

    球形にならぬたましひ春の雨           関根かな

    珊瑚礁隆起はじまる春の月            中村  春

    拉げたんぽぽ腹式呼吸してごらん        佐藤弘子

    早池峰の空より零れ犬ふぐり           松岡百恵

    死者も又聴衆であり春の雨            水月りの

    みちのくの喪にみちのくの蕗の薹         長尾  登

    夕空の曲がり角にて蝶と会ふ           千田彩花

    初桜地球に氷期間氷期               平山北舟

    春ショール纏へばかすかなる浮力         柳  正子

    長老の髯であるなり地吹雪は            平川よし美

    記憶とは一代限り柳絮飛ぶ             春日石疼

    春星や大王烏賊は瞬かず             竹内葉子

    梅が咲く犬を飼はない人生に            樫本由貴

    鶴引くやいつか無くなる紙の本           草野志津久

    薄氷の消えぬ一日や喪服脱ぐ           佐野久乃

    うたかたの世なり蜆が舌を出す           村上花牛

    人の死の遠のく早さ梨の花             江原  文

    おぼろ月遺構鉄骨浮かび出る           池田紀子

    滑り台三月の空滑り来る               斎藤真里子

    死は生の否定にあらず桃の花           中林経城

    花菜風名もなきものにこそ力            丸山みづほ

    底の抜けさうな箱からお雛さま           塚本万亀子





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