小 熊 座 2017/9    №388 当月佳作抄
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     2017/9   №388   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    馬の尾に山の風来る晩夏かな              大場鬼怒多

    夏草を被曝の牛が食みこぼす               土見敬志郞

    にんげんの口の暗がりさくらんぼ             さがあとり

    青空のどこか歪みて行々子                日下 節子

    具象的造形として夏の富士                 田中 麻衣

    夏ながし盥に水子遊びゐる                 上野まさい

    山鳩の声のこもりし薄衣                   浪山 克彦

    最上川逆白波のごとき鮎                  津髙里永子

    わが身にも迷路がありて心太                篠原  飄

    さらば友よ小窓の内も暑からう               春日 石疼

    肋には肋の軋み青やませ                  丹羽 裕子

    百合の香濃し手の大鋏触れてより             大久保和子

    てのひらに木漏れ日包む更衣               関根 かな

    瀬頭に七夕流ししばし立つ                 須﨑 敏之

    美しい日本を問われ梅雨激し               四戸美佐子

    強いて言へば寄るとしなみの暑苦し            山田 桃晃

    生きて死ぬただそれだけのことソーダ水         鯉沼 桂子

    百済へは夢で行くべし初蛍                 蘇武 啓子

    音たてて肋にも吹け若葉風                 秋元 幸治

    生き過ぎと思う日もあり綿の花               阿部志美子

    黒南風はガムシロップの重さかな             千倉 由穂

    ゴジラなら火を吐き出して星涼し              髙橋  薫

    肉食みし顳顬を這ふ西日かな               佐々木智佳子

    肉体といふ牢獄にゐて暑し                 清水 里美

    一花もて画布よりあふれしむ花火             江原  文

    遮光器土偶に陸奥の梅雨隠る              相原 光樹

    金平糖いづれも梅雨の星の粒               橋本 一舟

    アスファルトの下に土あり蟬しぐれ            えんどうかつこ

    夕雲の奥燃えて居り青葡萄                斎藤真里子

    啄木の夢に新居の西日かな                鎌倉 道彦





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