小 熊 座 2021/10    №437 当月佳作抄
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     2021/10   №437   当月佳作抄

                             ムツオ推薦


    疫病の世に人衰えて夜の鹿          渡辺誠一郎

    相識らず今年の蟬と去年の蟬        増田 陽一

    おはぐろに案内されたる鬼子母神       永野 シン

    日が昇る伸び縮みする蚯蚓にも        我妻 民雄

    万巻の書の黙として秋暑かな          武良 竜彦

    寒蟬の穴かも知れず潰れゐる          水戸 勇喜

    みちのくの合掌土偶月の雨            村上 花牛

    抱瓶にデイゴ一輪洞窟(がま)の前           江原  文

    ライオンが檻に嚙付く終戦日           佐野 久乃

    人住めぬ村の獣の星月夜            植木 國夫

    西に鳴けば東に呼応雨蛙            秋元 幸治

    気の抜けたラムネの底にある日暮      髙橋  薫

    真言につながっている夏の月         小笠原祐子

    ホームレス五輪を嗤いバナナ喰う       岡本 行人

    祓詞キアゲハは翅ひろげおり         蘇武 啓子

    かなかなや星はゆっくり光だす         佐藤 みね

    昼寝こそ煮炊きの力老人力          椊田 浩子

    かなかなやいつまで火照る土踏まず     大和田節子

    持て成しはできませぬがと芋殻焚く      布田三保子

    くさかげろふちりとりに嵩なせりけり      樫本 由貴

    白南風のカデンツァとして競技場        松岡 百恵

    横たえる身体湖底として夕立          千倉 由穂

    消しゴムのぼろりと欠ける広島忌       奥村 俊哉

    むざんやな汚染土に産むきりぎりす      菅原 若水

    蜩や古書に残れる帯の跡            佐川 盟子

    野に螢仏壇に燭灯る村             龍  太一

    古里の女のような扇風機            竹中美千代

    地下水のごとく在りたし涼新た         若田  郁

    毎日があたらし畑の茄子胡瓜         大友セツノ





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