小 熊 座
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− 渡辺誠一郎展 −

               
「俳句と写真」の余韻  

                                  及 川 真梨子
         


    北上川へぶ厚く雪の濡れかかる     誠一郎

  ポスターの写真は、雪の積もる岩手県盛岡市にある不来方城址(盛岡城址公園)の啄木

 歌碑。「渡辺誠一郎展 俳句と写真」は、先の11月9日から21日にかけて、宮城県塩竈市

 にあるギャラリー「ビルドスペース」にて開催された。これはその報告記である。
 
  展示の内容は、自身の俳句を書にして額装したもの、著書『俳句旅枕 みちの奥へ』( コ

 ールサック社、2020年5月)の写真と文章が主である。額装と言ってもダンボールやプラ

 スチックの板に書かれたものもあり、それぞれの字体と紙の味わい、書かれた句の内容が

 相乗し、深みのある作品となっていた。どことなく、鬼房先生やムツオ先生の書体も彷彿と

 させる。

  私が伺ったのは11月20日。晴天に恵まれた塩竈市に自家用車で向かったところ、ちょう

 ど、同年代の若手俳人らにも遭遇。サロンのようになった展示会場の一角で、誠一郎さんか

 らお話を伺うことができた。

  東日本北大震災から十年が経ち、その中で俳句を作り、発信することの意義について。

 災禍の被害もその犠牲者も軽んじてはならないし、無視もできない。しかしそこへ踏み込むこ

 とは、今生きている者同士の計り知れない思いが交錯する。生々しさを伝えることも、それが

 目的ではない。

    祈りとは白き日傘をたたむこと      誠一郎

  この句は、震災の追悼の句であるが、それだけでなく、誰かをなくした者のすべての祈りが

 含まれる。たたまれた日傘は合掌の手の形にも似るだろう。対象をもう一段階抽象化して、

 その最初の主題から離れることなく、深く読み上げる姿勢を語って頂いた。

  また、俳句の書も正直大変おもしろかった。大きな白いキャンバスに堂々と描かれる字、余

 白のバランスの取れた空間使い。俳句は句会や句集、活字で触れることが多いため、作者の

 書として展示されることに、とても新鮮な感動を受けた。肉筆のリアル感はとても大きい。作者

 の手先を通して表される強弱や質感によって、作者が本当にしたかった表現に近づいてゆくと

 いうお話しも頂いた。

  『俳句旅枕 みちの奥へ』への写真群は壮観である。本では白黒だった写真がカラーで大きく

 引き伸ばされ、文章とともに配置される。句や書のみならず、写真の構図にも大胆と繊細が同

 居していると感じた。

  俳句は基本、五七五のただ一行。しかしこの作品世界の自由な展開はどうだろうか。俳句作

 品が持っている多角的な視点というよりは、むしろ渡辺誠一郎という表現家の、多岐にわたる

 感覚の触手の一端に、触れたような感じであった。


    


 − 現代俳句協会地区協会長インタビュー −

         
渡辺誠一郎(宮城県現代俳句協会会長) 

                              小田島 渚(協会青年部)


  現代俳句協会ホームページにて無料動画配信している「地区協会長インタビューシリーズ」。

  第7回は、宮城県現代俳句協会の協会長渡辺誠一郎氏と青年部小田島渚(小熊座)です。

 昨年11月、塩竈市のビルドスペースで開催された『渡辺誠一郎展』が撮影場所となっています。

  佐藤鬼房からの出会いから始まって、震災を詠むこと、そして今と深い想いが語られています。


  「現代俳句協会 地区協会長インタビュー」で検索できます。(約40分)


     地区協会長インタビューシリーズ - 現代俳句協会 (gendaihaiku.gr.jp)


              


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