小熊座 句 集
雲の小舟  平松彌榮子
      


角川書店
定価 2700円+税

    
 『雲の小舟』    平松彌榮子


 平松彌榮子(ひらまつ・やえこ)

 大正14年  大分市生れ
 昭和32年  「馬酔木」入会
 「鷹」「序曲」各同人を経て、平成7年より「小熊座」同人
 第2回「小熊座賞」受賞
 句集に 『陽のみち』 『転生』 『朧の木』
 現代俳句協会会員

 


   黄砂降る肉体に肉ありもせず


   
この世に永らえるものは必ず滅ぶ。

  もし永遠化することができるとすれば、

   それは言葉の世界以外にはない。

   平松彌榮子が俳句を作る意味は、

  そこにあるのではないか。


              高野ムツオ 帯(序)より 



   
高野ムツオ(序)選


  切株の露にきてゐる一羽われ

  百歳のわれを見てゐる朧の木

  這ひ出でて紅梅ところどころの世

  足弱の木となるならば冬桜


  
就床の痩骨日傘たたむがに

  うららかに傘寿手を抜く衣食住


  黄砂降る肉体に肉ありもせず

  はじまりは馬の尾さばき秋の風

  春の空はづれ馬券を舞はしめよ

  空駆けてきし藤懸かる禁猟区

  めがねはづせば蝶の声あり杉並区

  揺れざまは天に呼応し秋桜

  手を打てば鯉が総出の夏はじめ

  兄病む空雲の鯨に雲の舟





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