小熊座 句 集
桜 蘂  永野シン
      


朔出版
定価 2200円+税

    
 『桜 蘂』    永野シン


 永野シン(ながの・しん)

 1939(昭和14年) 栃木県黒羽生まれ
 1991(平成3年)  「小熊座」(佐藤鬼房主宰)入会
 2002(平成14年) 佐藤鬼房逝去により高野ムツオに師事
 2003(平成15年) 「小熊座」同人
 2008(平成20年) 第一句集『断面』(ふらんす堂)上梓
 2011(平成23年) 宮城県俳句賞準賞受賞
               
 宮城県俳句協会会員、現代俳句協会会員


 


   高野ムツオ 帯(序)より 


   長寿社会と言われる今日でも、長生きは得がたい

  天恵に変わりない。

   しかし、同時にそれは、来るべき日に向かって老い

  と孤独と、そして、自分自身と闘いながら、もがき生き

  ることに他ならない。

   永野シン俳句には、その重い命題から目を逸らすこ

  となく、一途に懸命に生きようとする姿が刻まれてい

  る。しかも、亡き人と心を通わせながら。本集は、そう

  したひたむきな女性の現在時点の紙の道標である。





   
高野ムツオ 十五句選



  月光のほかお断りわが栖

  壺焼のぷくぷくあれが初デート


  落葉松の芽吹き金色父の死後

  一気とは恐ろしきこと散る銀杏


  
瓦礫よりすみれたんぽぽ苜蓿

  ブータンへ行こう木の葉の舟に乗り

  だんご虫よわれも必死ぞ草を引く

  手を延べてくれそうな樫初日影

  秋茄子煮ても焼いても独りなり

  春疾風この地捨てざる貌ばかり

  桜蘂踏みて越え来し母の齢

  秋の蛇飛行機雲のように消ゆ

  この世しか知らずに生きて秋夕焼

  鏡には映らぬ病冬座敷

  笑わざる如く笑って唐辛子





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