小熊座 句 集
HIGHQUALITY 龍 太一
      


飯塚書店
定価 2000円+税

    
 『HIGHQUALITY』   龍 太一


 龍 太一(りゆう・たいち)

 昭和18年 栃木県上都賀郡永野村上永野(現鹿沼市上永野)生れ
 昭和48年 飯田龍太に心酔して「雲母」入会
 平成27年 「郭公」主宰井上康明先生との邂逅を得て「郭公」入会
 令和 2年 前年より高野ムツオ先生との知遇を得て「小熊座」入会
 令和 3年 第2句集『HIGH・QUALITY』(俳句折亭)を飯塚書店
       より刊行
 現在  「郭公」会員  「小熊座」会員  山廬文化振興会会員
      日本現代詩歌文学館会員  俳人協会終身会員
      現代俳句協会会員

 


  天体は大きな柩渡り鳥


   ここには人間のみならず、この地上に生きとし生けるものへ注ぐ

  慈愛のまなざしがある。さらに宇宙さえもやがて命終の日を迎える

  との深い洞察に基づく生命観がある。宗教観と言ってもいい。世界

  とは目に見えない柩であると認識することで初めて知る命の大切さ

  がある。

                       高野ムツオ 序より 



   
高野ムツオ選 十五句


  赤子長睫毛子山羊も馬の子も

  春のあけぼの赤子にも草木にも


  生きてゐる限りの浮力蝶にあり

  白牡丹羽化のごとくに開花せり


  
火星大接近山蟻畳這ふ

  人類の化石は未完天の川


  銀漢は水のみなもと初硯

  翅脈暗緑みちのくの蝉骸

  火口湖は地球のまなこ鳥渡る

  天体は大きな柩渡り鳥

  硯海のやうな東京灣に月

  木枯に一途の目鼻ありにけり

  木枯の泪のような岬の灯

  光堂よりみちのくは凍て初むる

  羽毛にはまだ浮くちから鴨毟る





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