当月佳作抄 2025年4月 №479

ムツオ推薦

大津波来る前にまた蒲団干す

渡辺 誠一郎

おのが影どこにも映り竜天に

川口 真理

臘梅の裏口にしてつまづきぬ

中井 洋子

白鳥鳴けば夢はうつつに崩れける

栗林 浩

龍天に鼻の穴から煙ムを吐き

小島 ノブヨシ

春はあけぼの横たはるわれは川

小田島 渚

白鳥帰る嗄声の力恃みとし

春日 石疼

全集は未完の重さ菜の花忌

曽根 新五郎

嚏して魂抜けてしまひけり

岡田とみ子

ガタゴトと線路が曲げて春を追う

宮崎 哲

凩にたてがみのあり奔放に

清水 智子

春月や象は眠らず夢を見る

佐藤 みね

産声の届き流氷動き出す

須藤 結

スキーヤー宛然うをのごとくかな

樫本 由貴

春の夢喉に絡まり起きられぬ

𠮷沢 美香

どれもみな侏儒のままなり花辛夷

神野 礼モン

山祇の寝返りかまた遠雪崩

鎌倉 道彦

野遊びの時空違へてイグアノドン

小栗 不死実

春の山いま膨らんでゆくところ

木村 菜智

寒月が陸奥の砂金を散らしをり

羊 洵

ダイヤモンドダストしばれる帯広

林 喜久子

愛の日の爆弾型のチョコレート

木野 紗彩

萬象は天の統治下雪がふる

龍 太一

しんしんと険阻の村の冬芽かな

樫本 由貴