小 熊 座 2019  高野ムツオ  (小熊座掲載中)
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     2020年 1月   蒜香郷 2     高 野 ムツオ

             
―原郷栗原岩ヶ崎の古名、蛭子神を祀る―

    蠅叩く赤銅色の父の唇

    廃絶の一男根として汗す

    水飯に噎ぶ父捨て母を捨て

    旱田の亀裂が血脈朝日浴び

    そのたびに位牌が見える稲光

    孫太郎虫呑み込み眠る天の川

    冷飯はよく嚙みよく呑め秋の蟬

    蟋蟀や死ぬまで続く覗き癖

    稲の香に眠る一揆の裔として

    鉱山史とは鉱毒史虫の闇

    鰈の粗舐れる祖母の舌美し

    蘆の花水子も壜も口丸し

    桃の木の夢に生まれし冬の雲

    もう虫の声ではないが冬の虫

    凩や馥郁と月孕みおり

    山道の冬日溜りが母の臀

    包丁に残る葱の香星の音

    緒絶えし野田玉川冬の月

    杉山は母の胎内初明り





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