小 熊 座 2021  高野ムツオ  (小熊座掲載中)
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     2021年 2月   塩 引    高 野 ムツオ



    みちのくの真乙女蚯蚓落葉より

    竪穴へ女人三人霜日和

    環状列石から雪嶺へ一跨ぎ

    落葉渦夜は星渦聖塚

    雲一つなきと冬木が語り出す

    東西自由地下道われも落葉なり

    星雲がたしかに父の外套に

    枯蘆は行方不明者夕日に立つ

    白鳥は眠れる燠火去年今年

    大津波生れし方より初日影

    覆面を日常として初日受く

    渾身で氷る雑巾その淑気

    お降りや埋立てられし瓦礫にも

    お降りの雪積み辺土広がれる

    震災遺構校舎わけても米こぼす

    まだ胞衣に首を傾げ福寿草

    盃の底に鶴舞う俘虜の国

    今もなお俘囚ぞ燻りがつこ嚙む

    遂にまみえぬものに小熊座流星群

    塩引の皮最後まで歯に抗す

    白鳥の真裸の声雪の底

    白鳥の声に応えてまたも雪

    偸生の禿頭を越え大白鳥

    雪の降る街の逢瀬は夜見にもあり

    京を恋う千枚漬に雪が降る

    被曝せし赤子のごとし雪の山

    大震災十年後へと雪吹き込む

    落命また楽しからずや垂り雪

    通う血がありて凍れる銀杏の木

    水仙や地下のマグマも再稼働




     2021年 1月   寒 濤    高 野 ムツオ


    白鳥の声を枕に去年今年

    熱過ぎる震災十年後の雑煮

    黄泉なれば浮名もよけれ冬の月

    指差せば寒星怒り光増す

    寒を生くウイルス怖れ人怖れ

    縄文のままの大脳寒燈下

    千里も一里なりと寒濤立上がる

    廃線レール寒月光に曲り出す

    弾けたる輪ゴムの如し寒雀

    狼声の途絶えしのちの星の数

   
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