2024年 4月 干 柿 高 野 ムツオ
団子虫冬日塗れの土塗れ
団子虫龍の玉より丸かりき
団子虫団子をやめて冬日へと
糈米も霜を被りて道祖神
干柿の甘さ此の世になき甘さ
干柿は祖母の垂乳や食いちぎる
動輪が回る冬日の力もて
痩せ畑に凍る山影荒凡夫
初雪や老斑にまず二三片
珈琲を挽けば零れるように雪
2024年 3月 山 襞 高 野 ムツオ
目が疼く桜紅葉を踏みしゆえ
冬蝗触角のみで生きている
血族は絶え涸川の音残る
忘年の波音ついに炎なす
年守る燈北上川を氷らせて
きらきらと川歳晩を歌い出す
垂乳根の御慶金泥塗るごとし
山襞を風渡り来る福笑い
草石蚕に海の暮色がのりうつる
2024年 2月 氷 る 高 野 ムツオ
年を守る燃料デブリ玉と抱き
初日受く津波襲来沃野の隅
原子炉の垂氷初日が潤み出す
塹壕に微睡む兵士嫁が君
空飛べず毛布も被る幼子も
似て非なり瓦礫煉瓦と寒の餅
雪片の空爆なれば口を開け
小正月水蠆も蛟龍も来て遊べ
金屏に悴みてなお荒蝦夷
国家とは人家にあらず氷るなり
2024年 1月 穭 穂 高 野 ムツオ
雲に乗りたしと穭穂震えおり
蓑虫の声蓑虫が消えてより
毛糸玉蟇の寝息がする方へ
寸秒に長短のあり初時雨
黄落を詰めるトランクないものか
城之内ミサ
冬の星叩き擦りて弾き吹く
凝り過ぎの首を回せば寒の星
吉増剛造展
詩狼疾駆す言葉を砕き言葉生み
歳晩へ鳶も雀も鴉らも
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