2025年 3月 初 霞 高 野 ムツオ
雀にもタイヤにもあり去年今年
偉大なる国でなけれど初霞
みちのくは異形尊し芋頭
国なくて滅びし民の福寿草
初夢は俘囚にもあり尿太し
刻まれし神亀元年ただ寒し
百寿の母御慶の我にそつぽ向き
雀には雀の秘仏寒日和
ラーメンの湯気成人の日の終り
白魚の目のまん丸や箸の先
2025年 2月 換気扇 高 野 ムツオ
また回り出す年越の換気扇
無辺へと千手を垂らし菊枯れる
不立文字風に渦巻く落葉こそ
われら昔星雲なりき息白く
天の狼咆哮雪が降り出せり
財宝の如く雪積み小鳥の巣
多賀城に白鳥の声月の声
猥本にさつそく来たり冬の蝿
冬の蝿昨日の朝日今日も浴び
2025年 1月 銀杏金葉 高 野 ムツオ
銀杏翁鬼にならんと黄葉せり
銀杏翁悪鬼を踏んで黄葉せり
銀杏翁伐られ全霊黄葉せり
人類絶滅その日も銀杏黄葉せり
どこからか手平鉦音銀杏散る
金色の小鳥も交じり銀杏散る
えいやつと声を掛ければ銀杏降る
銀杏降るとうとうたらりたらりら
銀杏金葉一気に散らし不服従
イーハートブ永遠に化外や銀杏降る
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