小 熊 座 句集 萬の翅
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句集『の翅
平成25年
角川学芸出版
 

  
    

        萬の翅  高野ムツオ

   目 次

     樫の実   平成十四年

     蝦夷蝉   平成十五年

     凍れ日   平成十六年

     雪間草   平成十七年

     鯨の血   平成十八年

     緑の夜   平成十九年

     崖氷柱   平成二十年

     擽落葉   平成二十一年

     凍 裂   平成二十二年

     蘆の角   平成二十三年

     鰯の眼   平成二十四年



   自選句

     万の翅見えて来るなり虫の闇

     胞衣一枚拡がり春の空となる

     細胞がまず生きんとす緑の夜

     ことごとく火球となりて冬眠す

     詩の神を露一粒となって待つ

     天体もキャベツも一個春の夜

     膨れ這い捲れ攫えり大津波

     車にも仰臥という死春の月

     泥かぶるたびに角組み光る蘆

     瓦礫みな人間のもの犬ふぐり

     鬼哭とは人が泣くこと夜の梅

     陽炎より手が出て握り飯掴む

     みちのくの今年の桜すべて供花

     かりがねの空を支える首力

     初蝶やこの世は常に生まれたて




   あとがき

     本集は『蟲の王』に続く私の第五句集で、平成十四

    年から平成二十四年春までの十年数ヶ月の作品のうち

    から496句を収めた。この間に、セレクション俳人

    『高野ムツオ集』(邑書林)に『塩竈百句』と題した

    番外句集がある。表題は前句集に倣って旧字を用い、

    『萬の翅』とした。

     漠然とだが、この世を去る途中には、少なからぬ艱

    難が待っていると心していた。だが、それは想像をは

    るかに凌駕するもののようだ。この先の関門も霧中の

    ものにある。混沌とは死ぬまで、いや死後もまた続く

    ものであるらしい。ともあれ、非力ながら、今後も生

    きてある瞬間瞬間を刻んだ俳句を目指していきたい。

     最後に、句集上梓を支えてくれた石井隆司氏をはじ

    め角川学芸出版のスタッフに深く感謝申し上げる。


     
2013年9月19日

                     高野ムツオ




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