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特 別 作 品
山椒魚 土見 敬志郎
真夜中の家を出て行く水中花
日捲りに滝百折を繰り返す
産声は空の哀しみ花水木
修業のはじめは山椒魚の水
躁鬱など呵呵大笑の山椒魚
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青北風 柳 正 子
青北風や奥から波の匂ひして
草いきれ抜け出るまでは歩くべし
海冥し大虎杖の花こぼし
菖蒲湯に沈みみづみづしき末期
めまとひの自在に子捕ろ子捕ろかな
富士風穴 畠 淑 子
水打ちてひそかに睡魔同化する
無糖紅茶小さな蛇の眠る歳月
黒羽の椅羅長崎の大ごきぶり
五月闇水平思考ぴんと張る
濃あじさい血筋どこまで受けつがれ
はつなつ 吉 本 宣 子
豊葦原瑞穂の国の沖縄よ
抱合の神の匂ひや松の芯
おつとせいの肉の色なる春愁
瞬きの目玉に生まれおたまじゃくし
鈴鳴るはこの世の縁(へり)や白遍路
漂泊の色 太 田 幸 子
青簾押し上げ来たる犬の鼻
悪役の素顔を見たり麦こがし
ごはごはのジーパンも来て一夜酒
さるをがせとは漂泊の色なりし
水底に乱心見ゆる青みどろ
鯨の唄 土 屋 休 丘
ツンドラ弛ぶままシャーマンの偏鼓鳴る
融けねばならぬ狼ツンドラはびちやびちや
国は大草原バンドネオンと夜明の野火
梅老ひたり鯨の唄を待ちながら
神獣鏡ざくざくと桃花盛り
三 春 大 野 黎 子
お城山胸の高さの春の雲
お城山あの世の桜真自なる
駈けて来て愛姫桜に間に合いぬ
千年の色仄かなり滝桜
滝桜土に届きて咲きにけり
消えし人 福 原 栄 子
こたびだけ黄泉より戻れず彼岸西風
絵灯籠ひねもす灯すめまひかな
菩提寺の木立涼しき朝参り
日に青葉胸に石塊安国寺
滴りや寂光纏ふ夫の墓
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