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秋 袷 遠 藤 のぶ子
水平の天につながる雲の峰
象の耳ひらりひらりと秋桜
難聴の知らぬが仏秋の声
浄土真宗有髪の僧の秋袷
神苑に糞許されて親子鹿
天の川夜釣りの船を誘へり
文月や修正液は底をつき
新米を炊いて田の神招き入れ
冬銀河 菊 池 紀 子
透きとおるジャムを煮つめる春嵐
やわらかな雨の音呼ぶ春の声
春を呼ぶ研ぎし包丁水はじく
ふんわりと匂い広げぬ蕗のとう
たんばぼとひとり遊びの莉央(りお)の声
母という名の豊かさ桃の花
春嵐昼の鏡のなかに聞く
都忘れ亡父が奏でるハーモニカ
切 株 菊 地 巴 洸
一笛に竿灯百本立ちあがる
子供竿灯眼をこらしゐる車椅子
還らぬは囁きとなる秋の汐
戦死者は大正ばかり秋彼岸
街なかに馬頭碑残る穴まどひ
立哨の月しんしんと兵老いし
隠沼や咽の渇きし月上る
切株のレコード廻す秋の蝶
沈み魚 下 野 山 女
薄闇の茶の花に触れ見廻り
西高東低漬物石の灰汁光る
十五階より飛び立てり蟋蟀
秋探し眼鏡越しの返し縫
芋の露風の便りは誰れかの死
ビル風に逆らいて飛ぶ秋の昧
太陽に近づきたくて夏仔牛
死に際は渓の紅葉のすぎてから
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