小 熊 座 2008年12月号 283  当月佳作抄
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     当 月 佳 作 抄    
ムツオ推薦


 秋の風鈴戦を詠まず飢餓詠まず       越高飛騨男

 しゃかりきという力あり秋夕焼        佐藤きみこ

 秋風の末裔であり山の子は         土見敬志郎

 従軍記読めば周りは草いきれ        菊地乙猪子

 いづこにもはみ出たやうな秋日差      中井 洋子

 夕焼に透くや純粋オリーブ油         津高里永子

 ぼろ布のやうな豊かさ雪が降る       大澤 保子

 我に立ちはだかるはわれ鶏頭花      山本  源

 どの扉開いてみても黄落期         小笠原弘子

 葛嵐われを巻き込む前九年         浜谷牧東子

 生きるとは小道に躍る猫じゃらし      澤口 和子

 廃線路途切れしところ豊の秋        渡辺 規翠

 省略の効かぬ速さの秋の川        山崎 正子

 溝蕎麦にわずかに残る無頼の血     土屋 遊蛍

 羽根一枚落して行けり秋の風        阿部 流水

 がまずみや南部訛りにふりむけば     大森 知子

 悪友が刈田の匂いつれて来る       阿部志美子

 蝗取り知らない村に来てゐたり      佐伯  秋

 おほらかに湯気がもの言ふ衣被     白田喜代子

 末期まで間のある癌と秋の暮       土屋 休丘

 難しいことを易しく新松子          中鉢 陽子

 思想など無くて行動根切虫         田中  満

 ここに又戦没の墓水澄めり         田中 哲也

 極楽の一丁目へと秋の風          丹野 禮子

 四姉妹二人残りて曼珠沙華         加茂いつゑ

 歯をみがく今朝には今朝の虫の声      菊地 恵輔

 きちきちや草原は老いとどまらず       柳  正子

 秋雨のぐずらもずらやさらし飴         蘇武 啓子

 さみしいと尾が垂れますかえのころも     大西  陽

 かまきりのどこをとってもまずそうな      金澤ひろあき

 秋風に躓きそうな一日かな           紺野 リキ









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