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 当月佳作抄 ムツオ推薦
冬山に冬の水音倦みもせず 佐々木とみ子
がさがさとのみ枯蓮の恋の唄 白田喜代子
忘られ石臼となる寒日和 木村 えつ
靺鞨に聞こえんばかり冬の鵙 阿部 菁女
子が跳ねて帰ったあとの鏡餅 越高飛騨男
波音の奥から雪となる気配 小笠原弘子
枯葦の奥に影して歌ふなり 田中 哲也
寒牡丹雲なき空のゆるぎなし 平松彌榮子
自由とは何時でも咳の出来ること 千田 稲人
人間を留守にしてゐる暮雪かな 大場鬼奴多
湯冷ましのような冬日や寿 土屋 遊蛍
枯蟷螂鎌と眼玉の残りけり 我妻 民雄
死に方はいくつもあって寒の雨 矢本 大雪
一湾の日が干鱈に移り来る 山崎 正子
一つ歳とる我と枯野と淡水魚 柳 正子
雪闇と思うて見れば熊のロ 村山 半信
流氷に一言主の神の声 下野 山女
初茜水面を走る葦の船 澤口 和子
吾子を待つ午後の冬日を部屋に溜め 松岡 百恵
日と月に照らされ通し枯蓮 渡辺 智賀
縁の下真間手児奈も春を待つ 水月 りの
冬探しホトケドヂヤウといふが棲み 田中 麻衣
鳶の輪のひしゃげているよ雪催 宇津志勇三
寒雀瞳に風を宿しけり 澤連 美穂
大雨の千賀の浦より淑気かな 菅野 礼子
裸木の天辺にある空の色 日下 節子
穂俵竜宮城へ靡きけり 岡本日出男
冬青空ひとは赤面わすれたり さがあとり
母の影濃くなるばかり一葉忌 菅原みよ子
雪晴れを残して消えし父の影 岡田あき子
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