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2009/7 №290 特別作品
弥陀の使者 永野 シン
尾形安平翁の橋なり花吹雪
遅桜不忘山の晴れを賜れり
北へ北へ初夏の闇牽く貨車の列
頬染めし志功の天女花かりん
桜しべ踏み一と駅を歩きけり
とんぼ玉首に揺らして著莪の寺
噛み合わぬ二人となりて心太
五月来る染師の刷毛のなめらかに
尺取虫に尺をとられて羅漢さま
薫風や羅漢と眺む青麻山
牛鳴いて風もみどりの朝が来る
将棋にも厭きて蛙の目借時
しまい湯に眼閉じれば遠蛙
韮神山は古戦場なり別れ霜
子ら去りて疲れの見ゆる夕牡丹
葭切や時には一人になりたいの
仙翁花植えしと一行日記かな
揺れやまず牡丹の空弥陀の空
うぐいすの声降るように阿弥陀堂
嘴太は弥陀の死者なり飛花落花
大回会 阿部 志美子
新緑をひとめぐりしてそば処
方言を誇りとしたる修司の忌
次の世は鳥になりたい葱坊主
野球部の駆け抜けて行く蝶の昼
端居して爺さまの語るよた話
本堂に百の足跡大回会
来世ある事を信じて大回会
あれこれと馬酔木の花の虚言癖
山吹に迎えられたる女人寺
春の雨歌い出したるトタン屋根
応答は「おう」でありけり竹の秋
桜咲き町の輪郭くっきりと
ぼろぼろの歳時記抱え春惜しむ
花の旅バッグの隅に金平糖
花冷や忘れた過去を引戻す
植田道行けば母校の中学校
花茨手先の長き少女達
長き世や止まったままの掛時計
時を越え風が行き交う座禅草
はすかいに薫風を切る花鋏
春から夏へ 佐藤 みね
青白き雪解の匂い吸い込みぬ
残雪の光りて風の影を追う
雪解川ひかりの音を重ねつつ
春立つや母への想いこみあげて
雲の色やわらかくなる春の空
野を行けば強き意志わく春の風
残り鴨声なく見上ぐ雲の翳
せせらぎの織りなす春日風少し
さえずりや木々の映りし湖の色
水音に乗りて燕の空となり
春月のふっくら重き光りかな
羽衣に包まれている春の月
朧月海の魚来る川辺かな
切株のかすかな湿り朧月
深海魚の眼の光る朧月
蛇出でてせせらぎ速し木々の影
木の芽雨陽に輝きてうすみどり
若竹のしなりて空へ馴染みけり
春の雨切株にある愁いかな
夏立つや少女の髪に風の色
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パソコン上表記出来ない文字は書き換えています
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