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2009/11 №294 特別作品
茄子の馬 千田 稲人
黒牡丹心の奥へ散りにけり
クローバー古墳の丘を燃え上る
牛蛙荒れたる沼の名を知らず
ポッピーの花みな笑う埋立地
川渡の馬が嘶く麦の秋
立ち入りは禁止ですよと梅雨茸
楽想を散らすごとくに夫婦滝
自動ドア開けて若葉の並木へと
なめくじり通過の趾の光りけり
八月の太陽深き疵を持つ
ロシア語の名はながながし夏机
谷川を去りし山女の鰭の色
思い出を崩すごとくに火蛾の群
地図にない里を探して茄子の馬
雲の峯君の寝言はスワヒリ語
高層の窓見上げおり含羞草
枯蟷螂鎌を振り振り尊厳死
仮寓なる門標のあり銀木犀
飼牛の背はまっ平豊の秋
鉄条網無月の空に鵺が哭く
芒 原 郡山 やゑ子
死ぬことは恐くないよと秋桜
父深く眠りたまふか夜の蝉
苦も楽も同じ器に心太
かなかなの疑問符ひとつふたつみつ
万緑の烏円陣組みゐたり
カンナ燃ゆ佐藤愛子を読みたき曰
笑ひすぎたる向曰葵の首垂れ
蝦夷梅雨のすき間をぬひてマリモ見に
断ち切れぬ縁ありしか凌霄花
幼子のなぜなぜ攻めや鳳仙花
静かなる華やぎのあり水引草
採血はお上手ですか彼岸花
鈴虫の業知り尽くす主かな
女郎花次第に人を遠ざけし
靴好きのどの靴履きて黄葉踏む
月天心雲かき分けし力かな
散りゆくを忘れてゐたし凌霄花
生くる為の手続き多き梅雨の月
齢問へばよろけてゐたる案山子かな
身ぬちより悲鳴つづくや芒原
そぞろ寒 遠藤 のぶ子
すかし橋渡りて涼し五台堂
筆硯の乾いて梅雨の茂吉館
震源地遙かに海女の箱眼鏡
葉桜の陰を慕いて忠魂碑
街騒や四六のガマの油売り
踊り手に火男もいる村一座
稲作に想いめぐらす士用寒
秋風や知ってて知らぬ振りの人
汗のシャツ脱ぐに児の手を煩わす
死語となる兵隊ごっこ終戦忌
透視して脳を診らるるそぞろ寒む
紫陽花の彩もとりどり文学碑
竹落葉仰ぎて拝す五台堂
いしぶみに賜る一句あたたかし
秋惜しむ老に縁なき電子辞書
北上川の河口はやませの通り道
ひぐらしに急かされており立話
滴りて群青の彩ときめきぬ
芦刈られ道に残りし深轍
いづこ迄銀河鉄道父母乗せて
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パソコン上表記出来ない文字は書き換えています
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