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2010/3 №298 当月佳作抄
ムツオ推薦
野仏の一円玉に大初日 浪山 克彦
海の声聞くため筒袖胴着なる 古山のぼる
青空を母かと白樺の裸 平松彌榮子
冬薔薇家にも盛りありといふ 大場鬼奴多
春待つや壁画のジュゴン裏がえり 浜谷牧東子
雪の降るとりわけ母座声の澄み 澤口 和子
土壁のかたちに冬の来ていたり 小笠原弘子
影あれば仏がおわす桃の花 青野三重子
この町の顔をしてをり雪だるま 関根 かな
下野の葦は枯るるに飽きてをり 中井 洋子
初雪や産みし躯を湯に放つ 松岡 百恵
終末は陽にまみれたる枇杷の花 秋元 幸治
樹魂とは皮なり冬のさるすべり 須﨑 敏之
白菜を割れば言葉の生まれたり 髙橋 森衛
逝きし友悼みて鷗目が赤い 福原 栄子
木も空も虹の匂いや鬼房忌 武田香津子
冬薔薇なにごと秘めし震えかな 吉本みよ子
老境に似ている冬の青空は 阿部 流水
シベリアの氷の匂い遺骨還る 相沢 ふさ
湯湯婆の蛇腹に触れている思郷 平川よし美
みかん剥く話のページ開くごと 阿部志美子
毛の国のをんな枯野を胸の奥 鯉沼 桂子
マフラーは風の模様を忘れゆき 伊東 卓
人知れずここにも張りし初氷 紺野 リキ
石に凍蝶身の半分はすでに石 小林 檀
見えねども痣がありけり冬椿 澤邉 美穂
初明り簪匣に声のする 伊澤二三子
初旅は散歩気分で昴まで 柳尾 ミオ
おかっぱに節穴よりの初日影 中村 春
底無沼の底の見えたる寒さかな 塚本万亀子
表札に朝日の匂ひ寒雀 日下 節子
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パソコン上表記出来ない文字は書き換えています
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