小 熊 座 2010/4  №299 当月佳作抄
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     2010/4  №299  当月佳作抄

                                      ムツオ推薦



    散りつもる山茶花に生かされてゐる     平松彌榮子

    白髪は三千丈なり雪おんな          佐々木とみ子

    飯粒の凍てし弁当椅子持つて来い      津髙里永子

    手鏡の曇れば狐来さうなり           渡部州麻子

    一本の早苗御祖の貌をして          吉本 宣子

    海底のマグマが動く春みぞれ         澤口 和子

    もの思うかたちに葱の曲りけり         小笠原弘子

    風光る死ぬ瞬間は皆同じ            関根 かな

    秘めしこといつか忘れぬ寒卵          柳  正子

    鐘の音の尾のゆらゆらと惟然の忌       沢木 美子

    春の空より降りてきし乳母車           中井 洋子

    竜宮を誰も語らず松の芯             土屋 遊蛍

    寝そびれた俺に那由他の雪が舞う       矢本 大雪

    着て越前水母になるかカーデガン        平川よし美

    冬銀河の胎内を出ぬ我らかな          俘  夷蘭

    子の歳は母なる月日麦青む           松岡 百恵

    父の背を父は知らざり冬北斗          鯉沼 桂子

    首塚へ葱並びをり大和路は           春日 石疼

    春暁や百の疵ある漆の木            さがあとり

    大根のずっしりとあり今日のあり        田中 麻衣

    人見知りしていた頃の田螺かな        澤邉 美穂

    啓蟄の高速道路舌のごと            宇津志勇三

    父の忌の近づけばまた薄氷           田村 慶子

    冬夕焼夫の病衣に染まり居り          永野 シン

    夜空から獣のように雪の声            伊東  卓

    咳込みて涙目樺美智子の忌           畠  淑子

    竜の玉深呼吸して生まれけり          大久保和子




  
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