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2010/8 №303 当月佳作抄
ムツオ推薦
手長蝦星に触れるはいと易し 安藤つねお
塩胡椒味淋ひとしお梅雨に入る 佐々木とみ子
緑夜なり繭になれよと声のする 土見敬志郎
太古より乳は左右に栗の花 小笠原弘子
屑でよし星になりたき桜桃忌 澤邉 美穂
かなぶんの這ひしところが灯の外れ 中井 洋子
雨粒のなかの山河よ沖縄忌 上野まさい
物思えば水鉄砲の遠くまで 中鉢 陽子
月はいまブラジルあたり草を刈る 吉野 秀彦
雪柳おのれの影と打ちあへり 鯉沼 桂子
さつきまで虹を見てゐたやうな遺影 悼 高橋昭子さん 関根 かな
ともがらの絶えて卯波の寄せて来る 澤口 和子
海嶺より立ち上がりたる夏の雲 松岡 百恵
遠汽笛都忘れがざわざわと 須﨑 敏之
寝たきりの姉を叱りぬほととぎす 相沢 ふさ
月光を重ね着したりふるさとは 青野三重子
枯れ草の杖をほっぺに牡鹿岬 平川よし美
笊頭しばし休ます籠枕 田中 滿
郭公や湖ふっくらと暮れのこる 佐藤 みね
西日落つる彼方に羅馬隠れ耶蘇 小野 豊
なつかしくこわくさびしい夏座敷 武田香津子
抽象の王国にこそ鰹来る 大場鬼奴多
押し花に香りがすこし蘭丸忌 沢木 美子
若葉寒ひたすら海をふくらます 秋山 笹舟
琉球海溝水母の脚の嫋々と 中村 春
柏餅食えば遠くに来たような 宇津志勇三
夕焼の奥のその奥雨男 伊東 卓
頼もしき厚さ歳時記「夏の巻」 春日 石疼
夏草や母の野良着を今日も着て 松浦 香代
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