小 熊 座 2011/3   №310 当月佳作抄
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     2011/3  №310   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    いずこにも行けざる春の袷かな         平松彌榮子

    白雲に乗るため蕪土を出る           我妻 民雄

    冬の川われ佇ちをれば岐れきぬ        中井 洋子

    風花の街を押し分け救急車           千田 稲人

    風花や飛膜展げて逢いにゆく           土屋 遊蛍

    飢餓の碑の裏の枯蓮月夜かな          野田青玲子

    五郎助が鳴いてシングルマザーの児       渡辺 規翠

    愛欲や折りし氷柱が手を滑る           津髙里永子

    あめつちの黙契の音霜柱             佐藤きみこ

    嫁が君お前も村を捨てたのか           阿部宗一郎

    雑木山一本づつの枯れし影            柳  正子

    陸前の国冬帝のてのひらに            小笠原弘子

    大寒の堅乳として金華山              大森 知子

    霜強き上京日和なりしかな            須﨑 敏之

    山茶花は永久に散り継ぐ花であり         秋元 幸治

    ドレミファの音の先なる初御空           大西  陽

    紅絹裏のごとき花舗なり十二月          畠  淑子

    寒すずめ百円玉と頭陀袋              山田 桃晃

    白梅を映して暗き鯉の水              増田 陽一

    臘梅の薄暮に絵馬の鈴の音            山本  源

    ときめきの色は真っ白雪女郎           安達 幸子

    寒椿信士信女は窟の中              蘇武 啓子

    雪払ふ角巻強く羽博たかせ            半澤 房枝

    冬の泉あり牛小屋の牛の夢            遅沢いづみ

    廃品の玻璃美しき寒夜かな            大場鬼奴多

    春泥や象の鎖のゆるびたる           瀬古 篤子

    あらたまの犬あらたまの土に糞り         春日 石疼

    齢のみ記録更新風ひかる             水戸 勇喜

    着膨れの影が二木の松の前           永野 シン

    まだ見えぬ世なれど美しお正月          武藤 民子

    月一つ屋根に忘れて年の暮            板垣  茂


  

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