小 熊 座 2011/5   №312 当月佳作抄
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     2011/5  №312   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    断水の夜の荒星のうつくしき          佐々木とみ子

    ものの芽に昨日の日ざし今日の雨       青野三重子

    震災の新聞もとぶ花吹雪            増田 陽一

    きのふの詩けふ折れ曲がり春の空       中井 洋子

    頭から修二会の闇へお婆さん          上野まさい

    雪解川から交響詩「わが祖国」         阿部 菁女

    むき出しのあれは原子炉かぎろへる      我妻 民雄

    虫出しの明るさ雲も白髪も            柳  正子

    水も無く電気も無くて風光る            関根 かな

    白鯨の泳ぐがごとき雪庇かな           田中  滿

    鶴折ればみんな北向く流氷期           さがあとり

    息をして長らふ不思議つくしんぼ         鯉沼 桂子

    ジンタ過ぐたんぽぽを撒き散らすよう      須﨑 敏之

    末期の目海神みしか大津波           俘  夷蘭

    寒禽の声のぶつかる白障子           秋元 孝治

    寒雀魔の踏切を越えて来る           野田青玲子

    雪解水したたつているガラスペン         沢木 美子

    百年は一瞬記紀の梅真白             佐藤 成之

    春潮は神代の匂ひ猿田彦             小野  豊

    湧水に水の精おり燕来る             佐藤 みね

    薄氷の下の小波友逝きぬ             松本ちひろ

    土筆摘み来て昼月と居る座敷          広幡  茂

    啓蟄や制圧されぬ民あまた           瀬古 篤子



  

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