小 熊 座 2011/6   №313 当月佳作抄
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     2011/6  №313   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    存命の我が骨片と牡丹雪          越髙飛驒男

    遠き世の祖たちに似て野の土筆      平松彌榮

    瓦礫より光りしものに春の蠅         土見敬志郎

    陽は春の海に入るべく脚伸ばす       我妻 民雄

    蘆の角金剛力と人は言ふ           上野まさい

    藪椿ここまで津波来しといふ         増田 陽一

    犬釘の耳がならんで夏に入る         阿部 菁女

    青麦は怖れるもののなきかたち        秋元 幸治

    越冬蛾白きかたちを祖として         中井 洋子

    英霊の花見に父が加はれり          松岡 百恵

    初蝶は弔へぬ魂津波跡            小野  豊

    あかときはあけぼのの前蘆の角       さがあとり

    大波に散るを忘れて冬桜            千田 稲人

    手のひらに光の縞目春の地震         柳  正子

    千年も一瞬もみな春霙             澤口 和子

    津波が来てみんな攫って蝶が翔ぶ      篠原  飄

    がれきよりすみれたんぽぽ苜蓿        永野 シン

    来し方の深きところに牡丹雪          鯉沼 桂子

    聲となり角まで熱き葦の群れ          吉野 和夫

    寒晴や活版が噛む一行詩           春日 石疼

    地のぬくみ分け合ふごとし二輪草       志摩 陽子

    春の水あれはいくさの魂溜り          中村  春

    ビルはビルを映して花の曇りかな       田村 慶子

    鉄砲玉のようなお遣い蓮華草         神野礼モン



  

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