小 熊 座 2011/8   №315 当月佳作抄
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       2011/8  №315   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    人の世に墓地あり墓地に桐の花      上野まさい

    塩竈のががんぼがピアノを叩く       越高飛騨男

    植田の雲流れ原子炉まで百粁       古山のぼる

    こけしの瞳埴輪の目今生は梅雨深し    森  黄耿

    金蛇の死を金蛇が通り過ぐ          関根 かな

    カンナ咲く戦後を手繰り寄せながら     松岡 百恵

    五月蠅というほど若き蠅も無し        阿部宗一郎

    青蘆を折れど雷光みあたらず        矢本 大雪

    香具山のをとめが脱ぎし蛇の衣       吉本 宣子

    清拭を終えし高さに夏の蝶          土屋 遊蛍

    住み分けて人と鴉や陽は夏に        増田 陽一

    咲き終るまでの存在ねぢれ花        半澤 房枝

    梅雨明けの電線山を谷を越え        遅沢いづみ

    涼しさや光らむとして水迅し          柳  正子

    梅雨晴の白雲薩埵王子かな         佐藤 レイ

    緑陰で聞きしは水の声ならず         日下 節子

    動くもの人も獣も夕立も             おとはすみ子

    日溜りの蜥蜴やわれも家失なう        松本ちひろ

    土用波父の遺言のように引き         宮崎  哲

    柿若葉風がそんなにうれしいか        宇津志勇三

    新樹の夜耳もとに亡き人のこゑ        丸山みづほ

    黙禱すサルビアもまた列なして        瀬古 篤子



  

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