小 熊 座 2011/9   №316 当月佳作抄
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       2011/9  №316   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    

    踏み込んで四万六千日の藪                 平松彌榮子

    緩歩類として炎天を渇きつつ                 増田 陽一

    忌の名とはもってのほかぞさくらんぼ            阿部宗一郎

    紅蜀葵いくさの日々もかく咲けり               大澤 保子

    被災児と逢ふ油照潜り来て                  古山のぼる

    瑠璃色の尾を切り放つ夏の果                我妻 民雄

    歩かむとやや傾ける葉鶏頭                  上野まさい

    瓦礫山取り囲みいる草いきれ                 千田 稲人

    こゑもなくこぞる灯虫の命がけ                 鯉沼 桂子

    胸中を日暮がとおる原爆忌                  小笠原弘子

    玉虫のたましい重しされどとぶ                 須﨑 敏之

    父の日の瓦礫の底に暮れてゐる               土見敬志郎

    死はただの移行に過ぎず籠枕                 さがあとり

    ざふざふと影立つ奥の踊りかな                浪山 克彦

    あとがきに代へて真夏の雨が降る               関根 かな

    跏坐解いて聴かれよ蟇の恋唄を                阿部 菁女

    阿弖流為の貌して雷の旺んなり                吉本 宣子

    潮の香にむせてひとりの夏の旅                福原 栄子

    このたびの震災により水中花                  水月 りの

    鉄橋が朝日に濡れる五月かな                 秋元 幸治

    裸子は帆船走り出す刹那                    松岡 百恵

    鯨幕くぐり溽暑の津波遺児                   山田 桃晃

    夕薄暑軒を接して人は住み                   瀬古 篤子

    夏の葬死者のみ生きてゐる如し                春日 石疼

    石を抱きヤゴは見上げる遠い空                森田 倫子

    鞦韆を漕ぐ手はじめに影が漕ぐ                 髙橋和か子

    粽捲く家系の絶えることも良し                  斉藤 雅子

    夏の雲スコップに汚泥の重さ                  鎌倉 道彦



  

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