小 熊 座 2011/11   №318 当月佳作抄
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       2011/11  №318   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    涼風に乗る追憶の果てもなし               平松彌榮子

    奥まつて舌はありけり油照り                中井 洋子

    放射能逃竄はせぬ茸かな                 増田 陽一

    朝の血濃くしてゐたり時鳥草                我妻 民雄

    詩人に詩論盃に酒夜の秋                 佐藤きみこ

    洎夫藍や不明者減らば死者が増ゆ            さがあとり

    月光や死者と繋がる松の元                大場鬼奴多

    姨捨へ姨捨へとぶ蒲の絮                  阿部 菁女

    流星となるは瞬間衣被                   須﨑 敏之

    秋風を追越せさうな靴を買ふ               土見敬志郎

    秋風や地下水脈の上歩く                 大澤 保子

    墓碑群を過ぎて大暑の仮設村              野田青玲子

    人間は物でしかない大津波                橘  澪子

    帆檣のとどかぬところ鰯雲                 小笠原弘子

    新松子海の呼吸を聞いている               神野礼モン

    みなそこをながれておりぬ秋の雲             矢本 大雪

    百人の人の影なり残暑とは                佐藤 成之

    千年は蓮のまどろみ余震来る               蘇武 啓子

    はや九月転びやすきは木形子達             菊地 巴洸

    青柚子や水は空へと辿りつく                柳  正子

    桐一葉残りしものに老後あり               吉本みよ子

    ががんぼの一本欠けし脚に夢               澤邉 美穂

    色鳥の色に憂鬱はじまれり                 大西  陽

    みちのくの船霊呼べば桐一葉               吉本 宣子

    蜘蛛の囲の翅いちまいは形見なり            鯉沼 桂子

    八千草の匂ひ残して村閉ぢる               日下 節子

    レインボー・ブリッジに乗り秋空へ             河原 千秋

    流れ藻のただひたすらと言ふ色に             髙橋和か子

    秋深むゆえカツ丼は大盛に                 小野  豊

    顔も手も足も八月十五日                  髙橋 米子

    刃こぼれのやうな余生へ今日の月            田坂名雅子

    一頭の骸束ねる蜘蛛の糸                 川野 欣一

    停車場に停まるとみせて秋の風              尾賀 里山



  

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