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2012/2 №321 当月佳作抄
ムツオ推薦
山茶花や鏡中のもひとつの我 平松彌榮子
綿虫に会ひしばかりに麦粒腫 中井 洋子
火となるか吹雪となるのかおしら神 佐々木とみ子
はぐれ牛冬陽炎を反芻す 佐藤きみこ
里芋の頭に似たる風邪の神 阿部 菁女
冬至かな血のみなぎれる耳二つ 上野まさい
人寄れば人の匂ひや冬の雨 土見敬志郎
マスクして墓標のごとく並びゐる 大場鬼奴多
忘れたき事のみなれど年惜しむ 吉本みよ子
日溜りの桟俵に坐す生涯よ 篠原 飄
瓦礫には今も船霊冬の星 武田香津子
冬空や地球の影は何処まで 増田 陽一
頭出す雀五六羽霜柱 我妻 民雄
原子炉の冷え極まりて骨となる 菅 邦子
手拭いを絞れば冬日強くなる 佐藤 みね
生き延びて眩しと思ふ寒忍 安海 信幸
冬すみれ水門に死児の遊びゐて 澤口 和子
つややかな音ありとせばとんがらし 太田サチコ
冬銀河なかに真黒き星もあり 千田 稲人
冬青草過去へ吹かれている日暮 小笠原弘子
しもばしら関東耕土くすくすと 須﨑 敏之
水音にはじまる冬の寺めぐり 伊藤 晴子
希望とは冬菜畑を渡る風 秋元 幸治
東京は残像ばかり冬苺 蘇武 啓子
初雪や瓦礫の先の海の色 日下 節子
彼岸ではブータンシボリアゲハになる 沢木 美子
象の目のかなしみとして冬来る 尾賀 里山
楪や誰も知らない年が来る 工藤 俊雄
門灯を点ければ冬の蚊もきたり 森田 倫子
父なくて十一月の黄金蜘蛛 中村 春
人恋し夜長の端を折り曲げる 髙橋和か子
初氷午後のかたちにとけてをり 瀬古 篤子
ゆっくりと入って来そうな冬の雲 齋藤ふく子
色欲も祀れば神や実万両 渡邊 氣帝
遊び疲れし猿のごとく昼寝せり 梅津 昌広
九ヵ月十四日目のクリスマス 杉山 一朗
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パソコン上表記出来ない文字は書き換えています
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