小 熊 座 2012/4   №323 当月佳作抄
TOPへ戻る  INDEXへ戻る






     2012/4  №323   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦

    

    枯葉まとひて後の世までも柏の木              平松彌榮子

    わが内の活断層と霜柱                    増田 陽一

    死ありて死ぬのではない梅真白               大場鬼奴多

    立って見て坐してまた立ち出羽の雪             阿部宗一郎

    名も知れぬ骨と筋肉青き踏む                我妻 民雄

    白鳥の羽が生みたる夜の沼                 山野井朝香

    今日生きる軒に止まりて寒雀                 古山のぼる

    人魂は人に戻らず春の雪                   冨所 大輔

    咲くことは身を絞ること寒牡丹                 山田 桃晃

    水鳥にかかわりすぎた日曜日                土見敬志郎

    陽炎に礼して母を預け去る                  吉本 宣子

    正面に富士の裏側豆の花                   柳  正子

    草の花草にかくれて枯れゆきし                橘  澪子

    夕餉まで話す人なく春の雲                  岩井 タカ

    黄ばみたる譜面のごとく春眠し                森  黄耿

    これが最後これで最後と梅香る                水月 りの

    闇に生まれて紅ならむ冬薔薇                 菅  邦子

    雪解けに喜々と鳴子のこけしかな              遅沢いづみ

    生きものの鼾集めて冬の雲                  宇津志勇三

    人間に言葉春泥には光                    松岡 百恵

    永き日の有刺鉄線より孤独                  関根 かな

    魚竜化石みての帰りの桜餅                  俘  夷蘭

    阿武隈の渦を急がす芽吹き山                水戸 勇喜

    被災地のここが隅なり冬すみれ                日下 節子

    流されるために生まれて流し雛                さがあとり

    空の青けふがその日と蝶生れむ               瀬古 篤子

    春愁がジンジャエールに滲みたり               千葉 由穂

    流氷が来ていた真夜中の廊下                 山本美星子

    凍星や象の眠れる頭の中に                  池田 紀子

    春泥の乾かぬうちに生まれ来よ                竹中  華

    昭和とは襤褸に包む寒卵                   髙橋 米子

    六つの花黄泉に明かりのあるとせば             丸山みづほ

    蒙古襞伸ばせば春が刻々と                  田原 悦子



  

パソコン上表記出来ない文字は書き換えています
  copyright(C) kogumaza All rights reserved