小 熊 座 2012/5   №324 当月佳作抄
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     2012/5  №324   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦

    
    春霞産む苦しみの火焔土器           千田 稲人

    防人の声啓蟄の潮溜り              土見敬志郎

    死ぬまでの命蓄え春光に             越髙飛驒男

    眠らむか菫の気配折り畳み            平松彌榮子

    一つきりゆゑ出遅れし春の月           中井 洋子

    遠霞五臓六腑をたしかむる            上野まさい

    在りて無き我らの時代薄氷           須﨑 敏之

    美脚なら東京タワー春の風            遅沢いづみ

    地の底の声がこぞりて桃の花          浪山 克彦

    海へ向く足跡ばかり春の雪            八島 岳洋

    謹んで照井翠はつばくらめ            佐藤 成之

    雪遊びしてゐる声が空からも          関根 かな

    胸元で渦を巻きおり雪解川           阿部 流水

    三月の波のしぶきを弔花とす          佐藤きみこ

    朧の夜海底に拳突き上がる           古山のぼる

    隧道を抜け初蝶となる光             永野 シン

    観音の影も観音龍の玉              土屋 遊蛍

    鶯のこぼれ音ばかり港町             森  黄耿

    みちのくの歌女の短躯や土弄る         田中  滿

    人責める骨の髄まで霙かな            佐竹 伸一

    みんな出て来い紅梅の空の下          田村 慶子

    永遠に三十歳の多喜二の忌           長尾  登

    臘梅の一灯万の忌が近し             塚本万亀子

    春の虹奇跡は生きてゐればこそ         小野  豊

    枝垂柳を通ってきたという脳波          山本美星子

    闇動き恋の黒猫闇を出づ             雪村 光成




 

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