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 小熊座・月刊 
  


   2012 VOL.28  NO.326   俳句時評



          プロジェクト・アマテラス

                              大 場 鬼奴多


  天岩戸に天照大神が隠れ、世界が暗闇に覆われた岩戸隠れの伝説……。そんなアマテ

 ラスの名を冠したプロジェク
トを、去る4月下旬、講談社がスタートさせた。

  このプロジェクトは「あらゆるタイプの才能を多角的に発掘」できる「ユーザー参加型」の

 場で、「新たなプロモーション手法」を試す場でもあるという。ここで志向する新しい制作スタ

 イルとは、プロジェクト型コンテンツ生成システムを通して、講談社と各プロジェクトに集う参

 加者
が一緒になってコンテンツを作り上げていこうというものだ。旧来、出版社は「○○賞」

 などの賞を創設することで
作品の公募を行い、それによって新しい才能を見出すことが多

 かった。しかし、優れた才能、それを楽しむユーザー
が数多くネット上に集まっている今日

 の状況を考えた結果、
「われわれが紙の出版で培ったプロデュース力はデジタルでも生か

 せると考えるが、それだけでは不十分。コンテン
ツの作り方も時代に合ったものに変わる

 ため、その変化に
対応する才能が必要」と担当者は説明する。

  サイトには様々なプロジェクトが並んでいる。例えば、

 ① 「ワルプルギス賞」プロジェクト

   小説の新しい才能を求む!8000字以内で、あなたの書いた(これから書く)小説の一

   番読ませたい部分を送
ってください。まだ全部書き終わっていない場合でもOK。究極

   のエンターテインメントを求めます。

 ②『悲鳴伝』プロジェクト

   西尾維新著『悲鳴伝』のキャラクターとアイテムのビジュアルイメージを募集します。

 ③ プロジェクト『百鬼夜行Next generation 』

   京極堂には係累がいた……平成の世に京極堂が甦る。読者の皆さんのアイデアで新

   しい「百鬼夜行シリーズ」の
世界を作る。

 ④ プロジェクト『姑獲鳥の夏』

   京極夏彦著『姑獲鳥の夏』を元に、イラスト・デザイン・装幀・フォーマット・ビューア・その

   他、現在達成できていない新しい電子書籍のカタチを考案・開発し、実際の電子書籍と

   して発売する。

 ⑤ 装丁家になろう!

   「半七捕物帳」「不連続殺人事件」「こころ」「風立ちぬ」いずれかのカバーデザインをし

   てください。選ばれた方
には2013年講談社文庫新刊のカバーデザインを依頼します。

 ⑥ MMR復活プロジェクト

   90年代に「少年マガジン」に掲載されたMMR(マガジン・ミステリー・ルポルタージュ)が

   復活します。当
時のオリジナルメンバーが再結集し、石垣ゆうき先生による新作を目指

   します。

  プロジェクトの参加者の声を取り入れながら、コンテンツを制作し、必要に応じてサブプロ

 ジェクトを立ち上げな
がら、さまざまな才能が活躍できるようにする方針はほぼすべてのプ

 ロジェクトに共通している。参加者全員で創造
の喜びを感じてもらおうとする新しい制作ス

 タイルがうか
がえる。とりあえず23個でスタートを切ったが、目標は常時50個程度のプロジ

 ェクトが動いている状態だという。

  さて、こうしたプロジェクトのひとつに『俳句の山・連句の川』と題して、親交のある講談社

 の俳句仲間がサイト
を立ち上げることになり、そのサポートをさせてもらうことになった。

 《俳句の山》はひと月単位で兼題・当季雑詠を募集することにした。五月の兼題は【金魚】。

 〈心を自由に解き放ち、
豊かな季節の移ろいに身をゆだねて、俳句作りにチャレンジして

 みませんか〉という呼びかけに対して、〆切を間近
にして120句ほどが投稿されている。も

 ちろん、パソコ
ンの向こうの投稿者の顔も姿もわからないが、投稿されてくる一句一句を見

 ていると、はじめて俳句を作ってみたと
いう作品も多く寄せられている。

   風なびく鯉に焦がれる金魚かな             賢治

   残業を飽きずに見てる残花かな             林檎

   金魚ならスカート無くてもフリルかな           エデン

   すくってもすくいきれない金魚かな            伯史

   子猫にゃあぽろりと落ちる金魚かな          種馬

   すくわれて祭囃子に金魚舞う            nagamine

   ゆらゆらと赤いおしりの金魚かな           tomyfu

   さようなら金魚のような紅い口              屋上

  挙げれば切りがないが、俳句というものはその発想、表現、そして作者の存在そのもの

 も基本的にユーモアなのだ
と改めて思い知らされた。江戸の終りころに盛んだった月並

 諧。これは発句を遊戯化したもので、点者が季題を出し
て五七五の一句を作るもの。この

 月並俳諧を陳腐卑俗なり
として腹を立てたのが正岡子規だった。誤解をおそれずにいえ

 ば、私の周辺の俳人の多くは自己を表現するために
実に生真面目に俳句を作っている。

 俳句を作るという愉し
みがあっていい。このプロジェクトがこの先どういう展開を見せるの

 かはわからないが、俳句のユーモアということ
が、大事なキーワードとなることは間違いな

 い。

  《連句の川》については触れる余裕がないが、付け句を一週間で〆切って治定していくと

 いう約束にして、脇起し歌
仙を試みている(現在オモテ五句目「月の定座」進行中)。

   五月雨をあつめて涼し最上川              芭蕉

   夏の霧立つ山間の里                   ぱんだ

   劇場に開幕ベルは華やかに               林檎

   ひとすじ空へけむり燻らす                狸




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