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2012/10 №329 当月佳作抄
ムツオ推薦
この世に残る人々がくる蓮の花 越髙飛驒男
髪洗ふもしもの時も髪あらふ 中井 洋子
忘れたることみな秋の風となり 平松彌榮子
夏逝くとお菓子の袋ふくらめり 佐々木とみ子
万緑の中陸封の息をする 土見敬志郎
西は被爆東は被曝あかとんぼ 我妻 民雄
被災してやませの奥に息づける 阿部 流水
敦煌の沙より出し星月夜 吉野 秀彦
浜昼顔従軍慰安婦の数ほど 沢木 美子
噴水に穂のあり発展途上国 清水 智子
胸底に邯鄲を飼い少女老ゆ 澤口 和子
学校に行かぬ楊貴妃目高かな 大西 陽
町内の丸ごと老いて夏まつり 太田サチコ
遠花火男にはなき身八ツ口 伊藤 晴子
野辺送り螻も飛蝗もこほろぎも 日下 節子
祖母も母も我も使いし梅干壺 吉本みよ子
八月を重ねて錆びしオルゴール 森 黄耿
昼顔に見せない顔の二つ三つ 秋元 幸治
かなかなの渦巻くところ山寺は 大久保和子
湿舌の先端にゐて柚子の花 中村 春
湖底も照らせよ蕎麦の花明り 水戸 勇喜
不忘の山の昼月田水沸く 塚本万亀子
路地奥にスカイツリーや鬼灯市 花房 幸道
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