2013/4 №335 当月佳作抄
ムツオ推薦
雪国に生くるわれらやcon fuoco 阿部 菁女
擦れ違ひたるは􃟮の如きもの 増田 陽一
目つむれば見える銀嶺鬼やらい 矢本 大雪
加国とて遠き隣国春疾風 大場鬼奴多
雪無限死期の孤独に耐へらりよか 野田青玲子
涅槃図や沖の沖まで朝の凪 浜谷牧東子
哀しみに半減期なし冬の靄 松岡 百恵
寒昴白波同じものはなし 俘 夷蘭
動きつつ薄氷は無に千曲川 我妻 民雄
薄氷をそれぞれ胸に核家族 菅 邦子
忘れてもいい事余寒の灯にくるむ 山田 桃晃
春を待つその日暮しの震災後 阿部 流水
この星のはじめ火の玉芽麦立つ 鯉沼 桂子
直線の国境知らず春炬燵 瀬古 篤丸
西方に浄土はあらず霾曇り 田中 麻衣
わが影が邪魔涅槃図に罷り出て 津髙里永子
霜夜に逝く裸電球のみ残し 大澤 保子
聖母子を踏みたるよりの海女暮し 長尾 登
まなうらに白夜も虜囚もみな老いて 阿部宗一郎
龍頭まで円やかにして春の雪 冨所 大輔
外へとはどこまでのこと鬼は外 林 衿
泣くといふ奥の手のあり霜柱 大和田節子
雪原の靴跡月へつづきけり 平山 北舟
人間は両腕下げていて日永 千倉 由穂
胸底の澱に生れし雪女 丸山みづほ
死も力生くるも力冬薔薇 永野 シン
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