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2013/7 №338 当月佳作抄
ムツオ推薦
どくだみと呼ばれて花の白十字 吉本みよ子
ががんぼの一肢残してみな去りぬ 大澤 保子
晩春のひかり旋毛に波頭 土見敬志郎
春泥の乾くさびしきところより 中井 洋子
椿落つ死とはかほどの音もせず 森 黄耿
水面より口はがしては蛙鳴く 我妻 民雄
歩けば風止まれば此の世青き嶺 柳 正子
新生姜齧れば風になれるかも 水戸 勇喜
越南の夏蚕熱気を這ひのぼる 津髙里永子
なんじゃもんじゃの芽吹きや父も母も亡し 永野 シン
揚雲雀泣いているのは人ばかり 武良 竜彦
連鎖する貧困烏瓜の花 大場鬼奴多
成行きといふ道のあり目借時 髙槗和か子
湯治場の鍋釜薬缶夕桜 中鉢 陽子
豆飯や帰還困難区域依然 さがあとり
砲台の上の少年こそ酷暑 すずき巴里
線路皆東京目指し修司の忌 長尾 登
青葉して渦なせる山ビートルズ 布田三保子
軽暖や人形焼の顔ならぶ 神作 仁子
青蛙古代原語は歌だった 山本美星子
早苗束跼めば風のよく見えて あべあつこ
阿弖流為の眼差しの先春逝けり 千倉 由穂
芍薬の全霊で咲き明日のあり おとはすみ子
心という不可思議なもの水羊羹 瀬川 亨子
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