２０１３／９　　№３４０　 　当月佳作抄

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ムツオ推薦

　　　　夏の雨学徒軍靴の他になし 　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　越髙飛驒男

　　　　越南は知らねど匂ふ稲の花 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　浪山　克彦

　　　　土弄り世に居る限り藪蚊寄る 　　　　　　　　　　　　　　　　 　　冨所　大輔

　　　　陸前のなまくら山瀬竈神 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　古山のぼる

　　　　綿の花空のにほひが小半時 　　　　　　　　　　　　　　　　 　　上野まさい

　　　　骨壺に入り切らぬ骨日雷 　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　瀬古　篤丸

　　　　旱天や地球半分以上飢え 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　篠原　　飄

　　　　子が生まる前より静か日の盛り 　　　　　　　　　　　　　　　　　中井　洋子

　　　　神風と云う青春へ矢車草 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　澤口　和子

　　　　桐の花空の広さを今更に　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　日下　節子

　　　　相愛となりて南瓜の煮くずれぬ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　蘇武　啓子

　　　　海藻より浮かびて来ませ絵燈籠 　　　　　　　　　　　　　　　　　渡邊　氣帝

　　　　ひるがほや佛むづかる海の底 　　　　　　　　　　　　　　　　　　山田　桃晃

　　　　熱帯夜ハローキティは眠らない 　　　　　　　　　　　　　　　　　 松岡　百恵

　　　　朝曇生前からの醤油臭 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　柳　　正子

　　　　サイダーの泡見つめおり三回忌 　　　　　　　　　　　　　　　　　阿部　流水

　　　　青葉騒よりまぼろしの神馬かな 　　　　　　　　　　　　　　　　　 岡田　明子

　　　　夏座敷遺影のほかの貌知らず　　　　　　　　　　　　　　　　　 　春日　石疼

　　　　炎暑ゆえゴッホの絵をば見に行かむ 　　　　　　　　　　　　　 　小野　　豊

　　　　富士山という吹き出物雲の峰 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　武良　竜彦

　　　　大杉の注連縄にある大暑かな 　　　　　　　　　　　　　　　　　　平山　北舟

　　　　洞窟の一つ一つの沖縄忌 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　長尾　　登

　　　　戦あるな家鴨水牛蟬しぐれ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　竹内　葉子

　　　　縄文が足から伝わる朝の露 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 笠岩ひろし

　　　　郭公の声に目覚めしことを先づ　　　　　　　　　　　　　　　　 　 丸山みづほ

　　　　セシウムの何処へ迷ふ青林檎 　　　　　　　　　　　　　　　　　　黒田　利男