小 熊 座 2014/2   №345 当月佳作抄
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     2014/2  №345   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    天竺へ通ふ橇かもあの鈴は                 阿部 菁女

    南天の実や知らざりしあまたの死              平松彌榮子

    墨堤やいまも昔の都鳥                    我妻 民雄

    いちにちに日暮は一度海鼠噛む               小笠原弘子

    老年は晩年ならず冬の蝶                   増田 陽一

    補聴器と冬陽と罹災証明書                  渡辺 規翠

    魚にも乳房が欲しい六林男の忌               佐々木とみ子

    白鳥の啼き交はすとき首自在                太田サチコ

    遺構ホテルいまは寒灯ともらねど              渡邊 氣帝

    コート脱ぐ喧騒をその肩にのせ                松岡 百恵

    子と抗うことも今生霜柱                    須﨑 敏之

    闇のなき家はあらざり白障子                 小野  豊

    空中に直線を引く鵙の声                    秋元 幸治

    みちのくの夕陽染み入る馬の墓               岡田 明子

    ねこじゃらし身の透けるまで揺れ止まず           安達 幸子

    亡骸となりし福耳笹子鳴く                   中村  春

    枯菊の日にも雨にも供花として                瀬古 篤丸

    大空と光り合ふもの冬木の芽                 山田 桃晃

    寒潮にもまれて来たる誕生日                 澤口 和子

    まだ川の形一筋冬の川                     柳  正子

    冬の蝶ここも戦のありし跡                   竹内 葉子

    風花やこんどといふはいつのこと               草野志津久

    初霜に閉じ込められていくは陸奥               千倉 由穂

    戦争の影伸びてくる白障子                   船場こけし

    落葉松の申し合はせて散る日かな              水戸 勇喜

    短日の砂にまみれて鶏の声                  伊澤二三子




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