小 熊 座 2014/7   №350 当月佳作抄
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     2014/7  №350   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    長子の忌麦の匂ひの通り雨             山田 桃晃

    名もなき日々此処にたんぽぽ日和為す      須﨑 敏之

    毛虫いま天降りの途上糸ゆらす           我妻 民雄

    崖つつじ夕日浴びても燃え尽きず          阿部 流水

    死後の永き時間をゆらしライラック         武良 竜彦

    みづからを揺さぶる齢山桜              中井 洋子

    こんな日のやがて逝く日の風光る          鯉沼 桂子

    遠き日の近づくやうなあたたかさ          志摩 陽子

    はじめての海の記憶や夜の新樹          清水 智子

    母の日や昼の月より母の声             大久保和子

    縮むにも大きな力蝸牛                松岡 百恵

    本当に赤い赤紙聖五月                佐藤 レイ

    ふくらめるだけふくらんで滴れり           さがあとり

    寝て起きて又寝て老いて四月盡           阿部宗一郎

    春光のしたたりであり子の笑顔           牛丸 幸彦

    花水木風は平らに吹いてゐる            伊藤 晴子

    彷徨へる牛ゐる国や茎立ちぬ            瀬古 篤丸

    若葉雨半分光の国にいる              及川真梨子

    渦巻けるものに五欲や黴の花            布田三保子

    母逝きてふらここの影たゆたひぬ          坂下 遊馬

    瓶底に北上山河春暮るる               根木 夏実

    水音に濁音はなし花山葵               大森  海

    みどりの夜都会の雨は垂直に            平山 北舟

    惜しみなき御手に招かれ新樹光           丹羽 裕子

    膨張の止まらぬ宇宙石鹸玉             亀山 行房

    山吹やこの道かつて獣道               塚本万亀子

    合掌す阿弥陀仏にも菫にも              草野志津久






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