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2014/11 №354 特別作品
十三幻視行 矢 本 大 雪
十三の砂山ヤ~エくちずさむ新涼
死ぬ前の蜆ラーメン生身魂
はまなすは白く異翅類みななびく
狛犬の口が真っ赤な秋の空
出来秋のソフトクリームなめている
若死にの友のためある猫じゃらし
枝豆の莢を飛び出る流れ星
赤のまま海へ海へと生き急ぐ
萱の原死はいっせいにたなびきぬ
天高し赤い鳥居が天に舞う
石段を黄泉へと降る母郷かな
境内の死者ばかり選る赤とんぼ
ひと言に黙す小暗き杉の森
跳びはねたつもりで蝗死んでいる
マッコリが押し寄せてくる秋の浜
二礼二拍手肺から飛び出す竈馬
男郎花秋の叙勲を待っている
コスプレの狐なまめく高山稲荷
津軽から南部へ藁を焼く煙
葦原を無数の見えぬ手が揺らす
母 よ 髙 橋 彩 子
風船を母が放せば母の空
母になるから母の日のパンケーキ
ががんぼに手枷脚枷したき夜
みちのくの軛となれる木賊かな
花野来て背中の母をひと揺すり
狐火や乳の匂いのビスケット
秋風や綻びやすき身八口
箱庭にグリコのおまけ散らばれり
賑やかに鶏頭枯れていたりけり
蓬髪に指遊ばせて春落葉
柿若葉母に密事あれば佳き
流星や涸井戸に蓋そして石
風紋は皺腹のごと蛇の衣
わたなかに魂あつめ夏銀河
小流れに拗ねる水あり蓼の花
辻々にコスモス溜り猫溜り
母に寄れば睡りが伝染る余花の雨
おおかたは風邪のせいなり人恋し
梅雨の蝶千年杉を侮らず
木の橋に木の道続く小六月
蔦紅葉 俘 夷 蘭
みちのくの背骨山脈血の紅葉
十万年超す放射能蔦紅葉
奥羽山脈に処分場とは祟神
汚染水の捨て場ではなしこうなごの海
放射性廃棄物溜まり過ぎたる無月なり
ロボットに頼む廃炉や鰯雲
大夕焼地球一つの魂を抱く
紅葉山人は世を継ぎ旅をせり
亡き母や通草紫種子を吐く
俳句とは皮膚の言葉や萩に雨
広島など各地に集中豪雨、土石流の被害があり、遠い友人たちを心配した。ことしも地球温暖化による異常気
象、テレビではアメリカのハリケーンによる洪水、竜巻きを見た。
台風が来ると地球が自転しているのを実感する。日本列島はモンスーン地帯でその禍福がある。化石燃料を
産業革命以来、使ってきた人間による気候変動をもたらしたものにちがいない。大げさでなく、身近な日常の問
題である。福島原発事故の放射性廃棄物のため、宮城県加美町が最終処分場の候補地となり環境省副大臣と
知事が来町した。その場所は奥羽山脈にある雪や降雨による水源地で下流の河川とつながっている。住民の多
くが不安を訴えている。田や畑も上流部に多い。福島では中間処理施設を県も町も受け入れたようだ。環境問題
には長い間関心を持ってきた。放射能の半減期はプルトニウムで二万四千年、ネプツニウムで二百四十万年余
である。縄文時代が一万年前で、とても人間に責任がとれる時間ではない。ブラック・ジョークと笑えないのであ
る。 (夷蘭)
桃 春 日 石 疼
桃よりの夕風そこにカメムシが
桃ひとつ灯して夜の冷蔵庫
宝石のごとき桃穢されし桃
月経の少女のまなこ桃を剝く
地球吸ひ尽くす桃吸ふくちびるで
桃啜るひとまづ怒り丹田へ
桃の実に牛革ほどの産毛かな
寝返れば線香の香と桃の香と
我ひとり血はつながらず水蜜桃
空き箱の香るや桃と遊びし日
去る七月二十四日、初めての「小熊座・福島句会」が開催された。会場は私の勤めに隣接するグループホーム
の工房。福島県在住の会員七名による小さき旗揚げではあったが、高野主宰のご指導のもと活発な句会となっ
た。会員の発案により句会の名称を「翅の会」として、お互いの飛躍を誓い合った。
福島で小熊座の句会を立ち上げることの意味は何だろうか? 一つは「小熊座俳句」を福島に拡げること。今
一つは小熊座を通して、「福島の今」を日本に発信することだ。でも先ずは丁々発止の句会をみんなで楽しみた
いと思っている。
私個人としては本当に久々の句会である。俳句の本質を衝いた主宰のご指導と才気あふれる連衆から学ぶこ
とで、私の俳句もこれから幾分かは良くなっていくかもしれない。
近くは、美味しいラーメン屋の激戦区。句会後は駅前で楽しい反省会。県外の皆さんの参加もお待ちしていま
す。 (石疼)
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