小 熊 座 2015/3   №358 当月佳作抄
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     2015/3  №358   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    強霜や光りだしたる被曝の木           土見敬志郎

    海知らず海の色なす竜の玉            小笠原弘子

    癒えし身の何に隠れむ冬日向           平松彌榮子

    人類に冬の時代と久慈良餅            佐々木とみ子

    青空を氷塵雲集してゐたり             我妻 民雄

    ガラス戸に溶ける風花人悼む           清水 智子

    日脚伸ぶ米の研ぎ水ほどの幸           阿部 菁女

    薺打つ生成りのままの半生に           沢木 美子

    寒星の鳴りだす父の遺影かな           浪山 克彦

    齢加ふこの冬もこの日向にて            中井 洋子

    昭和九十年人は畑に麦を踏み           大場鬼怒多

    北に星こぞり楢山枯れつくす            半澤 房枝

    東京の光を零す冬の蠅               関根 かな

    底冷えの墓標が生きてゐた証            遅沢いづみ

    熊笹の五指広げゆく寒日和             瀬古 篤丸

    鳩胸に天を引き寄せ弓始              髙橋 彩子

    子と孫と食器の山と淑気かな            田村 慶子

    妣の影消す手はなかり寒卵             水戸 勇喜

    転生のさなかなりしや山眠る             森田 倫子

    まづまづの空の切れ味初筑波            鯉沼 桂子

    どんど焚生者の声も昇りゆく             宮崎  哲

    聴きに来よ樹木が雪を払う音            斎藤真里子

    人間が人間を撃つ息白し               船場こけし

    榾燻るひたすら海は海の色             渡邊 文子

    凍星や象の眠れる頭の中も             池田 紀子

    岩山の岩山ぶりを冬の雨               布田三保子

    駐輪場の轍濡れをり冬銀河             坂下 遊馬

    小鳥居らぬ籠風花は止まらず            根木 夏実

    瓦礫より音なき音や初明り              丸山千代子






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