走るとは孤独の受容梅月夜
待つ方が好きペットボトルの水温む
車止め外す寺領に春の空
まだ四年もう四年花種を蒔く
迂回する車列なす鳥雲に
ホントウノコエヲキキタシハルゴタビ
たんぽぽ咲いたか銀色遮蔽壁
貞観の仏も見るや桃の花
パソコンの底から霧笛三・一一
おんころころ陸奥の仏は花の中
蕾とは勇気の起点花りんご
塊のいのち解くや蝌蚪の朝
春 潮 田 村 慶 子
春落葉波音嵩む座禅屈
干潮の底の底まで風光る
野茨に引き止められし古ジーンズ
草萌やここは雄島の崖っぷち
春潮のひたひたひたと島祠
春光や友と居てみな海を見て
双子島手が届きそう木の芽吹く
鳥の目にひたすら春の霙かな
島々は所定の場所に海苔の篊
ぼろぼろの句帳離さず青き踏む
春の雪ここは船霊様の域
足元に来て春の潮のとどまれる
帆船のバラストの石冴え返る
大砲の冷え冷えサンファンバウティスタ
裏坂に昭和の屋敷雛祭
一の宮裏の洋館春兆す
春愁も畳んで積みしシャツ・ズボン
三度目の宅急便や春の昼
日曜の無人の家の君子蘭
吾こそは厨俳人山椒の芽
断 片 宮 崎 哲
雪解のレールの先が我の里