住み着いて四十年や笹子鳴く
笹鳴や朝茶飲みいる寝惚け顔
若き日の暗き熱情薮椿
阿弖流為の無念を抱く落椿
潮騒へ心澄ませる落椿
水鳥の旅立ち近し羽づくろい
呼び交わし山河を後に鳥帰る
傷負えるものは残して鳥帰る
鳥雲に沼は平に深呼吸
志は高く高く掲げよ揚げ雲雀
置き去りの牛低く鳴く涅槃西風
残酷が残酷を呼び春寒し
三月は岐路鬼房の生まれ月
海境へ行きて五年目春の星
喪失の故郷さ迷う春の夢
逃げ水や復興探る被曝村
春の海茫々取り付く島もなし
夢の世の皆既月食夜の桜
老いの春才子多病と言うけれど 春満月 佐 藤 み ね 声かけて返事の来そう春満月
溜息の弾んで生るる石鹸玉
遠き目で象は鼻上げ燕来る
わが去りし後はかげろう大樹あり
切株の年輪かたし鬼房忌
剪定の午後のそよ風揚雲雀
橋二つ渡りて花の雨に濡れ
湖に映る木々から囀れり
湧水の光に揺れる藤の花
柳絮飛ぶ川の光を吸いながら
春の空廻す園児の万華鏡
ランドセル弾んで通る麦の秋
かけっこの子等に絡まる麦嵐
ラケットの風きる速さ遠郭公
青くさき闇のうごめく夏来たる
山影のさざめく川の花山葵
緑雨あり傘をまわして子を待てり
やまびこと溶けあう吾子よ風薫る
甲高い鴉は樹上梅雨晴間
山裾の暮色からませ合歓の花 こだま 遅 沢 いづみ 古代よりもののけの山霧深し
妖怪のふつと振り向く神無月
兄弟は鬼太郎世代虎落笛
毛糸編む母の母らしい配色
跨線橋北には雪の女峰山
雪女ならば父を連れて行かぬ
伝説の狐だつたら夜行性
竹やぶは小さく残り冬の月
あと少し待てば畑に春の葱
うたかたの弾け春空晴れわたる
一筋の水路春めく竹林
ころころと小川流れる梅林
古来より春とは鳩のグルッポー
三月の鯖の缶詰め平常時
一斉に花開き民族舞踊
歴史上最近花の鶴ヶ城
大雨の予報は外れ蛙鳴く
もの言はず地震雷ああ親父
河童淵おそらく小豆とぎもゐた 潮 騒 神 野 礼モン 薄氷に日の輪落として鳥の声
籬島橋を渡れば春夕焼
春の雨右脳へ右脳へと傾ぐ
熊笹の揺れるばかりや鴨帰る
新しき靴すんなりと春の虹
潮騒は幼子の声石鹸玉
百体の円空仏や土筆摘む
円空仏あの世この世に初音きく
万愚節タイトスカート短目に
春の風邪仙台駄菓子配られて
初蝶にフレアスカート踊り出す
すぐそこがわからぬ迷路春霞
太陽の底に千本桜かな
山の気を春野に集め生きるべし
桜風内に秘めたるわれの闇
草若葉ウエスト少しきつくなる
ウクレレの音鈍くなり菜種梅雨
ぼんやりと過ごす笑顔の葱坊主
風生まれ桜黄泉へと散りゆけり